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小倉競輪

KOKURA KEIRIN

81#

決勝戦レポート

吉田拓矢(茨城・107期)

単騎で初のタイトルを獲得

 6月高松宮記念杯、10月の寬仁親王牌に次いで、今年3度目のG1ファイナル。吉田拓矢が獲るべくして念願のタイトルを手繰り寄せた。
 「まだ夢みたいな感じで、信じられない気持ちです。本当にこれが感無量っていうのかな」
 こう振り返った吉田だが、V確信のゴールだった。同期の新山響平をとらえると、何度も右の拳を突き上げてファンの声援に応えた。
 「(単騎だったので)古性(優作)さんのラインから組み立てようと思ってた。道中、郡司(浩平)さんだったり、松浦(悠士)さんに入られたけど、そこを落ち着いて備えられたのが勝因かなと思います」
 赤板2コーナーで古性が先頭に立つと、3番手を確保した郡司を入れて、打鐘の3コーナー過ぎに松浦にも切り込まれる。吉田はどんどん後方に追いやられる。が、結果的にはそれが初タイトルを呼び込んだ。
 「ゴチャゴチャやるよりも一発狙った方がいいかなと。松浦さんが仕掛けたんで、その勢いをもらいました。あそこのおかげでいけました。(最終)4コーナーの下りで伸びる感じがあって、なんとか届いて良かったです」
 打鐘の4コーナーで新山が、古性を叩いて先行策。渡邉一成もなんとか続き、古性は3番手。山田久徳をすくった郡司が古性後位を奪取するが、そこを松浦がまくる。郡司、古性、松浦。輪界を代表する3人の壮絶なバトルを冷静に見極めた吉田は、最終2センターから外に持ち出して外を踏み上げる。松浦らを越えた吉田だったが、その先にはまだ北日本の2人がいた。ともに107期をけん引してきた新山のスピードも衰えることはなかったが、ゴール前でその新山を並ぶ間もなく交わした。
 「(G1の決勝で新山と)2人でワンツーをしているのが信じられない。(記念初優勝の昨年12月の)佐世保記念でも新山さんとワンツーでまさかG1も。あの時も新山さんが先行してたんで、また申し訳ないですね(笑)」
 仲間ととも高め合いつかんだ初タイトル。昌司(111期)、有希(119期)、2人の弟の存在も、吉田にとっては刺激になっている。同じ日の豊橋では有希が逃げ切りで優勝。S級で2場所連続の完全Vを飾った。
 「(有希の優勝を)僕は昼寝してて見られなくて(笑)。起きたら栃木の先輩たちから、すごいレースだったって聞いて、自分も負けられないと思いました。有希だったり茨城の後輩たちと(練習を)やらせてもらってるんですけど、毎回練習のたびにグランプリに乗って下さいって言われていた。すごいハッパをかけられてて、自分のなかでは厳しいかなって思ってたんですけど。こうして獲れたんでいい報告ができそうです」
 シリーズ5日目が終わった段階では、獲得賞金ランク11位。グランプリの権利を持っている郡司、松浦、古性の優勝なら、4着以上でも初のグランプリ出場がかなった。しかしながら、終わってみれば、タイトルホルダーとして、宿口陽一、平原康多に次ぐ関東3人目のグランプリレーサーになった。高松宮記念杯では宿口、寬仁親王牌は平原が、吉田とのファイナルでG1を奪取していた。それだけにグランプリでもの思いはあっただろう。
 「またこうして3人で走れるというのが信じられないです。前を走れるように志願して、関東で優勝者を出せるように頑張るだけです」
関東勢が待ちに待った20代のタイトルホルダー。獲得賞金ランクも5位にジャンプアップして、グランプリVなら賞金王が狙えるところにもいる。年末の大一番、吉田の夢が広がっていく。

 打鐘の4コーナーで主導権を握った新山響平は、渡邉一成を連れてグングン加速する。古性、郡司に松浦も加わったもつれてをしり目に、逃げ切りでのG1制覇も目前だったが、吉田にさらわれた。
 「(出る時に古性に)飛び付かれたら自分もチャンスがなくなるので、イエローラインのギリギリを攻めました。座った時に変なところに座ってしまって、直している余裕はなかったんですけど意外と踏めました。(最終)4コーナーの下りまでいけたんですけど、(吉田)拓矢にいかれてしまった…。拓矢に獲られたのが悔しいですね。なんかもう追いつけないんじゃないかって。でも、また追いつけるように頑張ります」

 ホームバンクの2人は、最終バックではまだ後方。まくった北津留翼に乗った園田匠がスムーズに外めのコースを踏んだが3着まで。
 「こんなに悔しいレースはいままでにない。(北津留)翼と一緒に乗れたチャンスを生かせなかった。バック9番手であのコースしかないってところを踏みました。けど、あと2車届かなかった。あそこまでがいまの力です」

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レース経過

 号砲で1番車の北津留翼が前に出て正攻法。北津留-園田匠の地元勢が前を固め、その後ろに新山響平-渡邉一成の北日本勢。単騎の松浦悠士、郡司浩平が続き、7番手は古性優作-山田久徳の近畿勢で、やはり単騎の吉田拓矢が最後方。この態勢でしばらく静かな周回を重ねる。
 赤板前の2センターで古性が踏み上げようとするが、これを制して郡司が車を上げていく。郡司に近畿勢、吉田が続いて赤板で3番手の新山に並びかけると、新山は車を下げた。3番手に入った郡司は後続の動きを警戒しながら更に踏み上げて1コーナーで先頭に立った。郡司を追っていた古性-山田が更に前に出ると、郡司は近畿勢に続き、この後ろに吉田が降りた。7番手まで下げていた新山はジャン前から反撃。渡邉はきっちり続くが、松浦は付いていけず2センターで郡司の後ろに入り態勢を整える。古性はかなり踏み込んだが新山が先頭に立ち、渡邉も外々に古性のブロックを避けて回り新山に続き古性は3番手。その後ろはイン郡司、アウト山田で取り合い、以下は松浦、吉田、北津留、園田で最終ホームを通過。最終バックで古性が仕掛けるが、無理とみて北日本勢の後ろに付き直す。松浦もスパートするが古性の外までが精一杯、北津留も車が進まない。新山-渡邉、古性で直線に入ったが、2センターで外に持ち出した吉田が、イエローライン付近を鋭く伸びて前団を一気に抜き去ってG1初Vを達成した。逃げた新山が2着に粘り、4コーナーで吉田にスイッチしていた園田が3着。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 7 吉田 拓矢 茨城 107期 S1 11 追込み
2 5 新山 響平 青森 107期 S1 3/4B 11.5 逃残 H B
3 4 園田  福岡 87期 S1 3/4W 10.8
4 8 渡辺 一成 福島 88期 S1 1/2W 11.5
5 2 郡司 浩平 神奈川 99期 SS 1/2B 11.2
6 3 松浦 悠士 広島 98期 SS 1W 11.3
7 9 古性 優作 大阪 100期 S1 3/4B 11.6
8 1 北津留  福岡 90期 S1 1/4W 11.1
9 6 山田 久徳 京都 93期 S1 2B 11.3

児玉碧衣(福岡・108期)

負けない女王

 役者の違いが際立った。前回、広島の優勝で25連勝のガールズケイリンの連勝記録を更新。連勝記録のプレッシャーをモチベーションに変えて、圧巻の3連勝で児玉碧衣がシリーズを駆け抜けた。
 1番車の児玉だったが、周回中は最後方にポジショニング。慌てることなく6番手から仕掛けた尾方真生を追走。尾方と2番手から出た大久保花梨で踏み合いになると、妹弟子の2人を児玉は2コーナーからまくりであっさりとらえて、同門対決にカタをつけた。
「柳原(真緒)さんか、(尾方)真生が仕掛けるっていうのを頭に入れていて、その2人が自分の前にいた。それで2人がやり合うのを見て、隙を見て動ことうと決めていたけど、ゴール前がギリギリだったのが反省点です」
 力の違いを見せて完勝も、柳原に半車輪まで詰め寄られたゴール前を反省する。絶対女王の理想は高い。
「3日間、(上がりタイムが)11秒台っていうのは自信になった。連勝はかなり意識をしていて、次の武雄を3連勝して、グランプリを勝って4連覇での400勝がハッキリとした目標。それをかなえるために、頑張ります」
 次回、12月6日からの武雄での3連勝を加えると通算399勝。メモリアルでのグランプリ4連覇を宣言する児玉の顔には、7月サマーナイトフェスティバルのような迷いはない。

 勝負どころでかぶった柳原真緒だったが、最終1センターで児玉後位を追走する。直線で追い込んで半車輪まで詰め寄ったところがゴールだった。
「(周回中は)尾方さんよりも前にいたかった。後ろは見ないように合わせて出たかったけど、立ちこぎして進まなかったですね。自力を出し切れなかった部分があります。普段、差しをしない分が出たのかな。踏まずに車間を切って詰める勢いでいきたかった。(児玉)碧衣さんが強かったです」

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レース経過

 互いに見合って横並びのスタートから永禮美瑠が出て行く。永禮、大久保花梨、小林莉子、柳原真緒、高橋梨香、尾方真生、児玉碧衣で隊列はまとまって周回を重ねる。赤板を過ぎて永禮、柳原が徐々に前との車間を切っていく中、誘導退避の打鐘手前で尾方がまず1車上げて仕掛けのタイミングを窺う。3コーナーで尾方が踏み出すと、合わせて柳原もダッシュ、永禮も踏み上げて一気にペースが上がる。腹をくくって先行勝負に出た永禮に尾方が迫った最終2コーナーで2番手にいた大久保がまくりで応戦。初手の並び通り尾方に続いてきた児玉はバック手前からスパートし、永禮、大久保、尾方で3車併走の外をバックで難なく乗り越えて先頭に。尾方、児玉を行かせてホームでその後位に切り替えていた柳原が児玉を追う。そのまま直線に入り、懸命に詰め寄る柳原を退けて児玉が優勝を飾った。終始、柳原の後ろにいた高橋が2人に引き離されながらも3着に流れ込んだ。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 児玉 碧衣 福岡 108期 L1 11.8 まくり B
2 2 柳原 真緒 福井 114期 L1 1/2W 11.7 マーク
3 5 高橋 梨香 埼玉 106期 L1 4B 12.1
4 4 大久保 花梨 福岡 112期 L1 1/4W 12.3
5 7 小林 莉子 東京 102期 L1 1W 12.1
6 3 尾方 真生 福岡 118期 L1 3B 12.5
7 6 永禮 美瑠 愛知 118期 L1 2B 12.7 H

小林優香(福岡・106期)

ラストチャンスでV

 獲得賞金でのグランプリ出場の望みはない。4度目のグランプリをつかむには優勝しかなかった。
「グランプリのチケットが取れたのはうれしいです。2021年、1つの大きなイベント(東京五輪)が終わって、悔しいままで2021年を終えるのは本当に嫌でした。このチャンスをモノにして2021年のグランプリを勝って、2021年が本当に良かったって締めくくれるように」
 東京五輪ではケイリン(16位)、スプリント(14位)の2種目に出場したが、思うような成績を残すことはできなかった。3年後のパリ五輪を目標に掲げて競技と本業の両立はこれからも続くが、来年を気持ちよく迎えるためにも、どうしてもグランプリ出場権が必要だった。ナショナルチームの活動でガールズケイリンの出場機会が少なかった小林優香が、ラストチャンスの今シリーズで圧巻のV。4番手から狙いすましたまくりを放って優勝を遂げた。
「とくに今回のメンバーは自力型が多かったので、立ち遅れないようにということで中団(3番手)の位置が取れたのは作戦通りです。前と車間をたもちながら、(打鐘の4コーナーで仕掛けた)奥井さんのスピードを一気にもらいながら行けたのが勝因だと思います。今日は落ち着いてレースに臨んでましたし、周りの動きがしっかりと見えたなかでいい走りができたんじゃないかと。後ろに(高木)真備だったり、(梅川)風子さんがいたのもわかったんですけど、最後までスピードを落とすことなく踏めました」
 15年以来、2度目のグランプリ制覇で、五輪イヤーを笑顔で締めくくりたい。

 打鐘の4コーナーで7番手から仕掛けた高木真備は、小林のまくりにスイッチして追いかける。追い込み勝負で逆転を狙ったが、小林を脅かすまでには至らなかった。
「後ろになっていまいましけど、前も仕掛けていくと思った。そこは冷静に周りを見られていたと思います。(小林)優香さんを追いかける感じになって、最後に追い込めたら良かったんですけど強かったです。(グランプリまで)あと1カ月あるのでしっかりと練習して、リベンジできるように頑張ります」

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レース経過

 号砲で石井寛子、奥井迪が出る。石井寛が前に奥井を入れて、奥井、石井寛、小林優香、南円佳、梅川風子、石井貴子、高木真備で周回。赤板で石井貴が単独で上げてくる。石井貴が奥井の前に入ったところで打鐘を迎えて誘導は退避。石井貴を先頭に最終ホーム手前まで来ると、奥井がダッシュ。奥井の先頭に代わり、石井寛が追走。石井貴が3番手に飛び付き、奥井、石井寛を追わなかった小林は4番手で態勢を整える。石井貴がいっぱいになって前に遅れだした1センターで小林が発進。バックで前の2人に追い付いた小林はそのままの勢いでのみ込みにかかって、抵抗する奥井を直線半ばでねじ伏せた。奥井の仕掛けに合わせて最後方から踏み出した高木が小林後位に追い上げる格好で続いていたが、追撃を許さなかった小林がV。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 小林 優香 福岡 106期 L1 11.8 まくり
2 5 高木 真備 東京 106期 L1 1/2B 11.7 マーク
3 3  円佳 鹿児島 116期 L1 3/4W 11.6
4 4 奥井  東京 106期 L1 1/2B 12.2 H B
5 6 梅川 風子 東京 112期 L1 3/4W 11.7
6 2 石井 寛子 東京 104期 L1 1B 12.2
7 7 石井 貴子 千葉 106期 L1 4B 12.2