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決勝戦レポート

松浦悠士(広島・98期)

初タイトルでグランプリへ

 準決勝を勝ち上がった時点で、決勝戦を無事故完走すれば松浦悠士のグランプリ初出場は決まっていた。「すごい緊張した」と準決勝を振り返ったが、重圧から解放された決勝戦では「緊張なく走れました」と笑顔。最後の最後にタイトルを獲ってグランプリ初出場に花を添えた。
 「実感はあまりないです。でも(タイトルを)獲ってグランプリに出られるっていうのが本当にうれしい」
 レースは中国勢と関東勢で大きくは2分戦。「前が取れたので踏んで吉田(拓矢)君がどうするのか見て突っ張るか粘るか」。突っ張る構えから関東勢を分断した清水裕友がすかさず2コーナーからまくって出た。
 「出てから諸橋(愛)さんが後ろにいたので、ギリギリまで待って追い込もうと。ヒロト(清水)が頑張ってくれたので自分が先頭で(ゴールを)通過できてうれしかった。タイトルはなかなか獲れるものではないのでラインの勝利ですね」
 昨年11月防府記念の決勝で清水に離れて、練習やレースに対する考え方が変わった。その後は12月に地元、広島で記念初優勝を飾り、2月の全日本選抜ではG1初優出と着実にランクアップしてきた。「1年間、頑張ってきたし、良かったなと思う」と強い気持ちで戦い抜いた2019年を振り返るが、次は今年の目標だった年末の大一番が待っている。
 「次はグランプリ優勝へ向けて、また始めないといけないな。もっと脚力を向上しないといけないし、(グランプリ)獲るって強い思いを持って1カ月過ごしたい」
 グランプリでも清水と強力タッグを組んでライバルたちと対峙する。

 清水裕友にとっては作戦どおりの組み立て。平原康多を飛ばして2コーナーまくりを打ったが、惜しくも初タイトルはならなかった。
 「2分戦だったので突っ張って、(吉田が)無理やり来たらハコ。引いたらないんでね。取り切ってすかさず行ったけど、ゴール前はいっぱいだったですね。4コーナーで気配がなかったんで、夢見たけど。悔しいのもあるけど、ラインで決まったので言うことない。グランプリは獲れるように末脚の練習しときます」

 グランプリ出場には優勝するしかなかった諸橋愛にとっては厳しいレースになった。柏野智典をキメて清水、松浦の3番手に付けたが3着が精いっぱいだった。
 「(イン粘りは)想定外でしたね。半分もなかった。いや10パーセント以下かな。考えが甘かった。拓矢も頭になかったんでしょうね。だからガツンと踏まなかった。もうその後は必死でした。康多も浮いたんで。3着に入るのが精いっぱいでした」

 2センターからまくった和田健太郎だったが、諸橋の一発にやられた。
 「行くならホームで行っちゃえば良かった。でも(平原が)浮いたのが見えてためらった。そこで行っとけば面白かったかも。何もできないよりは仕掛けられただけ良かったです」

 逃げた吉田拓矢は清水の分断にあって8着に沈んだ。
 「(仕掛けは)あのタイミングしかなかったですね。あれ以上遅いと突っ張られてしまうし。出てからはもう緩められなかったです。キツかったですね。悔しいです。また頑張ります」

 清水に飛ばされた平原康多はシンガリ負け。悔しそうにレースを振り返る。
 「(飛び付きは)あると思ってた。じゃなければジャンで飛ばされてました。勝負なので、逆だったら俺がやるんで。ずっとツケマイで苦しかったですね。結果は悔しいですけど、逆のパターンもあるので」

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レース経過

 号砲で松浦悠士が出て、清水裕友-松浦-栢野智典の中国勢が前受け。以下は和田健太郎、吉田拓矢-平原康多-諸橋愛、坂口晃輔、木暮安由となって静かに周回を重ねる。
 青板3コーナーから清水が誘導との車間を切って、後続をけん制する中、赤板で吉田ダッシュ。これに合わせて清水もスパートし、両者で踏み合いに。2コーナーで吉田が出切ると、清水は番手飛び付き策に出る。打鐘からは吉田の後位がイン清水-松浦、アウト平原-諸橋で激しい取り合いに。最終1センターで平原を飛ばして番手を奪い取った清水は、間髪入れずに2コーナーからまくって出る。バック手前で先頭に立った清水には松浦が続き、遅れた諸橋は柏野をキメて3番手に。直線に入り、粘る清水を、松浦がゴール寸前で交わしてG1初優勝を飾った。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 松浦 悠士 広島 98期 S1 11.4 追込み
2 5 清水 裕友 山口 105期 SS 1/2B 11.5 捲残 B
3 9 諸橋  新潟 79期 S1 3/4B 11.4 マーク
4 6 柏野 智典 岡山 88期 S1 1B 11.4
5 7 木暮 安由 群馬 92期 S1 1/8W 11.2
6 2 和田 健太郎 千葉 87期 S1 1/2B 11.5
7 8 坂口 晃輔 三重 95期 S1 1/8W 11.2
8 4 吉田 拓矢 茨城 107期 S1 4B 11.9 H
9 3 平原 康多 埼玉 87期 SS D 14.4

梅川風子(東京・112期)

梅川風子が連覇を達成

連日、別格の強さを見せていた児玉碧衣に人気が集中した決勝戦。その児玉のまくりに俊敏にスイッチした梅川風子がこん身の追い込み勝負で逆転した。
「あまり考えず流れのなかで走ろうと思ってました。(児玉)碧衣ちゃんが一人で来て、はまった感じです。本当にいっぱいで、余裕を持って走れなかったです。碧衣ちゃんが1周以上行ってるので、彼女が一番強かったです。勝てたのは本当にタマタマです」
大逆転でグランプリチケットをつかんだ昨年大会から1年。勝ち星、優勝回数は昨年を上回るなど、大きな成長を遂げた。
「今回は自分で仕掛けて勝ったわけじゃないですからね。去年よりも強い選手がどんどん出てきている。学ぶことは多いですね。グランプリが一番大きな目標になるんですが、そこまでの道のりが大事だと思ってます。しっかりトレーニングして、自分の力を発揮したいです」
年末のガールズグランプリの舞台は立川。地元ファンの前で最高のパフォーマンスを披露する。

児玉碧衣は2着に敗れたとはいえ、ロングまくりで力は出し切った。年末のガールズグランプリでのリベンジを誓う。
「やったほうです。吉岡(詩織)さんをめがけて行ったけど、詰まってバックを踏んでスピードを殺してしまった。細かい修正点はありますけど、サラ脚で梅川さんに後ろに入られたら抜かれますね。また練習してグランプリでやり返します」

前々に攻めた高橋梨香が梅川を追う形でしぶとく3着に食い込んだ。
「前々にいれば、どうにか戦えるかなと思ってました。初手が良かったです。後ろもゴチャついていたんで。普段の開催でも最近は決勝に乗れてなかったので、このメンバーで3着なら自分的には大金星です」

尾崎睦は児玉のまくりを追いきれず4着に敗れた。
「(児玉に)すんなりついていければチャンスだったんですけどね。6番(梅川)に阻まれてしまった。あの辺ですよね。ちゃんと付いていかないと。来年、また頑張ります」

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レース経過

 横一線のスタートから、外枠の2人がいち早く前の位置を確保。梅川、奥井迪、高橋梨香、吉岡、児玉碧衣、尾崎睦、細田愛未の並びで最終的に落ち着いて周回を重ねた。
 赤板で細田が上昇を始めると、合わせて吉岡、さらに奥井も動く。打鐘と同時に奥井が主導権を奪取。その後位には梅川、高橋が続き、3番手の外に吉岡と態勢が変わる。最終ホーム入り口で後方から児玉が巻き返すと、奥井も一気に踏み込んで力勝負に。吉岡も仕掛けるが、その外を1コーナーで乗り越えて児玉が奥井に迫る。児玉を追っていた尾崎は外を回されて苦しくなり、2コーナーで奥井をねじ伏せた児玉に、すんなり梅川が切り替える。このまま直線に入り、押し切りを図る児玉をゴール寸前で交わした梅川が大会連覇を達成した。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 6 梅川 風子 東京 112期 L1 11.8 追込み
2 1 児玉 碧衣 福岡 108期 L1 3/4W 12 捲残 B
3 3 高橋 梨香 埼玉 106期 L1 3/4W 11.7 マーク
4 2 尾崎  神奈川 108期 L1 1B1/2 12
5 5 吉岡 詩織 広島 116期 L1 2B 11.9
6 4 細田 愛未 埼玉 108期 L1 1/2B 11.9
7 7 奥井  東京 106期 L1 3/4B 12.3 H

小林優香(福岡・106期)

最後のチャンスをモノにする

賞金ランキング85位で決勝戦を迎えた小林優香にとって、このレースを勝つしかグランプリ出場のチャンスは残されていなかったが、やはり他の選手とは一枚も二枚も力が違った。バックまくりで抵抗する高木真備やゴール前で迫ってくる石井貴子にヒヤリとはさせられたが、「(グランプリ出場を)達成しに、ここに来たので」の言葉どおり、見事にガールズグランプリトライアル2019「トパーズ」を制した。
「ここを獲るしかないって思ってたし、しっかりもぎ獲れたのでいいと思う。今はうれしいというよりホッとしてますね」
小林に合わせて出てくる高木や石井の追撃も想定内。「最後は気持ちで何とかしました」と激戦を振り返る。強い気持ちはナショナルチームでともに活動する脇本雄太や新田祐大に負けられないという思いからだ。
「ワッキーさんは(出場機会が少ないなかで)賞金ランク1位だし、新田さんも獲るとこを獲ってグランプリ。自分も負けられないと思って来ました。グランプリは何年ぶりか分からないけど、決められたのはホッとしたし、力で決められたのはうれしい」
今月25日からはワールドカップ出場のため香港、ニュージーランド、オーストラリアを転戦。グランプリ前夜祭の前日に帰国するスケジュールだ。「(競技でも)結果を出せるように頑張ります」。次に小林の雄姿が見られるのは来月28日のガールズグランプリ本番だ。

終始、小林優香を追走していた石井貴子はゴール前で小林優香に激しく詰め寄ったが逆転ならず。
「不甲斐ないです。優香さんがまくり切ったら、しっかり決めようと思ったけどダメでした。出し切れないといけないなかで、(勝てないのは)フィジカルと脚力のなさかなと思う。体重も足りない部分かな。(グランプリまで)1カ月、練習して頑張ります」

高木真備も優勝するしかグランプリ出場のチャンスはなかったが、小林優香に力負け。3着に敗れた。
「出し切って負けたので悔いはないです。大久保さんに勢いをもらって行けたけど。今できる精いっぱいのレースはできたと思います。また来年頑張ります」

3着なら奥井迪を逆転してグランプリ出場だった小林莉子だが結果は4着。硬い表情でレースを振り返る。
「スタートを取ったら優勝はないと思ってた。こんなにけん制が入るレースになるとは思ってなかったので、難しいですね。(グランプリは)ダメか…。悔しいです」

  • 優勝者の写真です
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レース経過

 号砲で前に出た小林莉子だったが、前受けを嫌って誘導員と大きく車間が空く。小林の後ろにいた長澤彩が誘導員を追って正攻法へ。2番手に小林莉。7番手になった高木真備は青板バックから上昇し、小林優香の前に入って3番手。以下は、鈴木美教、大久保花梨、下げた小林優、石井貴子で隊列が落ち着き、打鐘を迎える。
 スピードを上げずに後方を警戒している長澤に対し、5番手の大久保が2センターから反撃開始。合わせて踏み上げた長澤を最終2コーナー手前で飲み込んだが、次は1コーナーで大久保の後ろに切り替えていた高木がバックからまくり出す。同時に、小林優も高木の外を仕掛けて両者でモガき合いに。4コーナーを回って小林優が先頭に立つと、初手からピタリと続いてきた石井を振り切って、15年以来3度目のガールズグランプリ出場権を獲得した。小林優マークに徹した石井が2着に入り、高木が3着に粘った。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 小林 優香 福岡 106期 L1 11.8 まくり
2 3 石井 貴子 千葉 106期 L1 1/2W 11.7 マーク
3 5 高木 真備 東京 106期 L1 1B 12 捲残 B
4 4 小林 莉子 東京 102期 L1 3/4B 11.9
5 6 鈴木 美教 静岡 112期 L1 3/4W 11.7
6 7 大久保 花梨 福岡 112期 L1 1B 12.2
7 2 長沢  愛知 106期 L1 1B1/2 12.1 H