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しずおか競輪

SHIZUOKA KEIRIN

38#

決勝戦レポート

三谷竜生(奈良・101期)

亡き母に捧げるグランプリ

 昨年、初めてグランプリの舞台を踏んだ時は、近畿ひとりだった。それだけに三谷竜生は、近畿勢が築き上げてきた“ラインの競輪”の重みを感じずにはいられない一年だった。
 「ダービーも高松宮記念杯もラインができて、そのラインのなかで走った結果なんで良かった。近畿の強さを改めて感じることができた」
 終わってみれば近畿一色の18年だった。6つのGIのうち三谷、脇本雄太がともに2つのタイトルを獲り、GIの表彰台には延べ11人が上がった。
 4人でひとつのラインにまとまったグランプリも自然の流れだった。ダービー、高松宮記念杯と同じく脇本の番手。Vポジションでもあると同時に、狙われる位置でもあり、決して生易しい位置ではなかった。
 「ジャンのところで少し浅井(康太)さんの動きが気になって、脇本君も少し行きづらそうだった。でも、出切ってからは、しっかり後ろの様子を見てって感じでした。(脇本は)非常に掛かっていましたし、誰も来られないかなと思っていた。それでも清水(裕友)君が来たので、少し張ったりしました」
 3、4番手を固めた村上兄弟まで近畿の4車が出切って、先頭の脇本が風を切る。このまま逃げる脇本とのゴール勝負かに思われたが、打鐘でのアクシデントでリズムが狂った脇本にいつもの強靭な粘りがなかった。
 「あとは外に浅井さんとかが見えたので、しっかり踏んで優勝を狙いにいきました」
 最終2センターで村上義弘と平原康多が接触して落車。そのなかで冷静に追い込んだ三谷が、2万人を超えるファンの前でゴールを先頭で駆け抜けた。1億円超の優勝賞金を加算し、年間獲得賞金額の記録を更新。初の賞金王に輝いた。
 「記録を抜いたことはうれしいです。今年は本当にダービー優勝から、いろんなことがあった一年でした」
 10月5日には61歳の誕生日を迎えたばかりの最愛の母・湖雪さんを亡くしたが、兄弟で支え合い激動の一年を締めくくった。
 「本当にいままで支えてもらって。すごく感謝していたので、もう少し一緒にいたかったなっていうのはありますけど。(グランプリを優勝して)いい恩返しができたんじゃないかなと。(来年は)1年間、(チャンピオンユニフォームの)1番車っていうことで、責任感のなかでしっかり走りたい」
 昨年、100期代として初戴冠を遂げた三谷が、平成最後のグランプリチャンプに輝き、輪界の新時代を切り開いていく。
 
 最終バック8番手から懸命にまくり上げた単騎の浅井康太が2着。グランプリ連覇はならなかったが、持てる力は出し切った。
 「平原さん(のライン)の後ろと決めてました。平原さんがもう1個、清水の前なら面白かったですね。平原さんに付いていって、そこから仕掛けたとしても(最終)3コーナーで浮くんで、それまでに平原さんの横までいこうと。もうちょいでしたね。(三谷)竜生もしっかり展開をモノにして優勝したんで強いし、そのなかで自分のできることを最大限やりきった結果なんで。勝てなかったのはなにかが足りなかったということなんで、まずは来年のグランプリに出られるように、しっかり努力して考えることが大事だと思ってます」
 
 最後方に置かれた新田祐大は、落車事故を避けて3着に入るのが精いっぱいだった。
 「脇本が結構、掛かってました。中団に清水君、平原さんがいて誰もなにもしないことはない。その動きを見極めて、あとは自分のタイミングでって思ってました。リズムが悪くてきれいに踏めなかったです」
 
 人気を集めた脇本雄太は、信念の先行策も直線で力尽きて5着に敗れた。
 「ジャン前の2コーナーの浅井さんの動きでバランスを崩して、焦ってしまいました。もう1回、立て直してから行けば確実に粘られますからね。自分のタイミングではなかったけど、(最終)4コーナー勝負はできると思ってました。あと30メートルくらい踏み切れないといけない。自分のなかではいい経験ができました」
 
 先に切って近畿勢を受けた清水裕友は、5番手からまくり上げて見せ場を演出した。
 「楽しかったです。切って飛び付いたぶん、脚を消耗しました。キツかったけど、行くしかないと思って行きました。力の差がまだありますね」
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レース経過

 号砲が鳴り、新田祐大がゆっくりと誘導員を追う。平原康多-武田豊樹の関東コンビが続き、単騎の浅井康太、清水裕友が4、5番手、脇本雄太-三谷竜生-村上義弘-村上博幸の近畿勢は後ろ攻めで周回を重ねる。
 青板4コーナーから動いた清水が、誘導員を降ろしてハナに立つ。6番手の脇本は、赤板1センター過ぎから仕掛けて清水を叩き、打鐘で主導権を握る。近畿4車が前に出切って、清水が5番手、脇本の仕掛けに合わせて踏んだ平原が6番手で最終回へ入る。快調に逃げる脇本に、清水は2コーナー手前から反撃開始。しかし、3コーナー過ぎの三谷のけん制で失速する。同時に、空いた村上義の内を突いた平原と、村上義が接触し、2センターで両者が落車。絶好の番手で4コーナーを回った三谷は、直線で力強く抜け出して、グランプリ初制覇を果たした。最終バック8番手からまくった浅井は、三谷に迫るも2着。落車を避けて、直線で大外を伸びた新田が3着でゴールした。
車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 三谷 竜生 奈良 101期 SS 11.6 追込み
2 2 浅井 康太 三重 90期 SS 3/4B 11.2 まくり
3 4 新田 祐大 福島 90期 SS 1/4W 11 マーク
4 6 清水 裕友 山口 105期 SS 3/4B 11.6
5 3 脇本 雄太 福井 94期 SS 3/4B 11.9 H B
6 8 武田 豊樹 茨城 88期 SS 1B 11.5
7 5 村上 博幸 京都 86期 SS 1/2B 11.7
8 7 平原 康多 埼玉 87期 SS D 0
9 村上 義弘 京都 73期 SS 0

太田竜馬がリベンジV

 昨年のヤンググランプリは準優勝。悔しさを糧に進化を遂げた太田竜馬が同じ舞台でリベンジを果たした。「無駄脚を使わずに脚をためて」。昨年の経験を生かした作戦がピタリと的中。狙いどおりの一撃で同世代のライバルたちを破った。
 「去年の経験から、絶対にもつれて脚がたまっている人が優勝するかなと思っていたので。内も絶対に空くから、落ち着いて走りました。想定どおりにレースが動いたかなと思います。内まくりみたいな感じで、ちょっと決め打ちでいった感じでしたね。そのあとは、力ずくでいきました。合わされたかなって感じもあったんですけど、最後踏み勝てたんでよかったです」
 四国のホープとして、思うような結果を残せない時期もあったが、今年の終盤戦から上昇気流に乗っている。9月高知の共同通信社杯ではビッグ初優出。11月小倉競輪祭では初めてGI決勝の舞台にも立った。
 「昨年から悔しいというか、なかなか思うようにならんことばっかりだったので、ちょっとずつよくなっていったかなと思います。今年は最後の最後でいい形で締めくくれました」
 今後はビッグ戦線で常に上位で戦うことが期待される。
 「持ち味はスピードなんで、今回みたいなレースができたらいいなと思うし、先行もできるので、どこからでもいけるような選手になりたいですね。まだまだ力不足ですけど、選手としてグランプリを目指すことは当然だと思うので、しっかり頑張ります」
 来年は輪界の頂点へ。太田の挑戦はまだまだ続く。
 
 南潤は単騎でも位置取りにこだわった組み立て。前々に踏んで懸命に追い込んだが、あと一歩のところで優勝を逃した。
 「3コーナーではもらったと思ったんですけどね。気持ち的には余裕があったんですが、脚が残ってなかったです。外併走のイメージはしていたけどホームでもバックでも脚を使っているぶん、進まなかった。門田(凌)さんが付いてなくて、ホームで(3番手に)入ってしまったのが…。そこが負けですね。負けると気合が入るので、課題は来年に残して、しっかり練習します」
 
 番手まくりの佐々木豪は3着。絶好展開をモノにできず、悔しさを隠せない。
 「松本さんがあれだけ行ってくれたのに、勝てなかったのは恥ずかしい。本当に悔しいですね。本当は(番手から)出たくなかったんですが、(南)潤が前々に踏んでいたので、出ないと厳しいと思った。ジャンから振ったり、慣れないことをしていたので、脚にくるんだなって。四国から優勝が出たのはうれしいけど、愛媛から出せなくて申しわけないです」
 
 人気を集めた山崎賢人は再三のブロックを受けて力を発揮できなかった。
 「位置は取れたらいいなというくらいで、しっかり仕掛けようと思ってました。(佐伯辰哉のブロックが)すごかったですね。でも、あれを乗り越えないと。すべてが後手、後手になってしまいました」
 
 中団確保からまくった竹内翼は不発に終わった。
 「組み立ては悪くなかったと思います。南とかぶっていて、そこだけは意地でもと思ってました。佐々木と南を見ちゃったんで、そこだけですね。太田に内から来られてしまった。気持ちを切り替えて、また頑張ります」
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レース経過

 号砲が鳴ると、島川将貴がスタートを取る。そこに太田竜馬を迎え入れて徳島勢が前団を形成。以下は南潤、山崎賢人、竹内翼-佐伯辰哉、松本貴治-佐々木豪-門田凌で周回を重ねる。
 竹内が青板の2センターから動いた松本に合わせて前に出る。松本は竹内を赤板の1センターで押さえて先行策。続いた南、山崎が中団で併走になるのを見てギアをトップに入れた。南が3番手に追い上げてから仕掛けると、佐々木は合わせるように踏んでゴールを目指す。前受けから8番手に下げた太田は、最終2コーナーから満を持してアタック。コースを縫うと、直線で外のコースを伸びて激戦を制した。南は離れた佐々木の後位に切り替える。直線で追い込んで2着に入った。番手まくりを放った佐々木が3着。浮いていた山崎は、最終2コーナーで佐伯に絡まれて5着まで。

児玉碧衣がガールズGP初制覇

 1年の集大成となるガールズグランプリ。ハイレベルな頂上決戦を制したのは児玉碧衣だった。人気に応える見事なまくりで頂点に立った。
 「今までにない喜びがすごくこみ上げてきて、本当に嬉しかったです。静岡のお客さんは声援も多いし、お客さんも多くてすごい力になりました」
 強い気持ちで挑んだ大一番。立ち回りは冷静だった。最終ホームを迎えてもけん制状態が続いたが、慌てることなくタイミングを見計らっていた。
 「たぶん我慢比べになるだろうなっていうのは思ってて。梅川(風子)さんがずっと後ろを見てるので。誰かが発進したら、その勢いをもらってっていう感じに考えてて。そしたら(高木)真備さんが先に動いたので。梅川さんも真備さんを追うのに必死だったから、その間に駆けちゃおうって思って。スピードもうまく乗ってたし。4コーナーを回ったくらいには優勝は決まったなと思いました」
 まさに完勝だった。これで8月平ドリームレース、11月小倉ガールズグランプリトライアルAに続いてビッグレースを3連覇。圧倒的な強さで初の賞金女王に輝いた。
 「去年、一昨年となかなか大きいところが獲れなくて、やっとオールスターとガールズグランプリトライアルとグランプリを獲ることができて、努力が結果に出てきてるのかなっていうふうに思うので、すごい充実した1年間だったと思います。今回もいけるだろうって自分に言い聞かせて自信を持って走りました。グランプリというのは一番大きい舞台なので、ここで優勝することができてまた自信にもなったし、来年はもっと強くなってタイトルを全部獲るくらいのつもりで頑張ります」
 児玉の進化はまだまだ止まらない。19年は絶対女王として、1年間を華麗に駆け抜ける。
 
 初手から児玉の後ろにいた石井貴子が児玉を懸命に追いかけて2着に入った。
 「大きな舞台で外枠が多かったんですが、今回は4番車なのでチャンスがあると思ってました。児玉さんの脚が一番あるのは誰もが認めるところだし、その後ろで勝負しようと考えてました。思ったより仕掛けが遅くなって、児玉さんが仕掛けた時に、尾崎(睦)さんとも併走になってしまったので、最後に差しにいくことができなかった。悔しいですね」
 
 スローペースにしびれを切らした高木真備は思い切って先行したが、3着に残るのが精いっぱいだった。
 「もっとみんな早めに来ると思ってました。ああなるとは思ってなかった。もう行きたいなって思って行ったけど、もうちょっと待ってもよかったかもしれない。1着以外は全部、一緒なんですが、自分で行っての結果なんで悔いはないです」
 
 史上初のガールズグランプリ連覇に挑んだ石井寛子は絶好展開をモノにできなかった。
 「(高木)真備ちゃんが行ってくれて、バックでもしかしたらと思ったんですけどね。そしたら意外に脚がキツかったです。車間を切っていたけど詰まらなかった。いつも通りの差し脚を発揮できなかったです。自分の力不足を痛感しました」
 
 地元の鈴木美教は持ち味を発揮できず7着に敗れた。
 「何もできなかったです。自分の甘さが出ました。また一から出直します」
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レース経過

 号砲と共に反応よく飛び出した石井寛子が誘導後位に収まり、高木真備が2番手を確保する。鈴木美教が4番手の児玉碧衣の位置に追い上げると、児玉は車を下げる。最終的な隊列は、石井寛、高木、梅川風子、鈴木、児玉、石井貴子、尾崎睦の順。
 打鐘を過ぎても隊列に動きはない。2センターで鈴木、梅川が車を外に持ち出してけん制し合うが、両者ともに仕掛け切れないまま最終回に入る。各車が意識し合って膠着状態が続くなか、高木が1コーナーからカマして先頭へ。石井寛は反応が遅れて高木と車間が空くも、2コーナーから懸命に追いかけていく。ほぼ同時に、5番手から児玉も仕掛ける。猛スピードで前団を飲み込んでいった児玉は、直線で高木を捕らえて初の女王の座に輝いた。初手から児玉を追った石井貴が2着。高木が3着に逃げ粘った。