KEIRIN EXPRESS

全国の競輪開催案内のポータルサイト

小倉競輪

KOKURA KEIRIN

81#

決勝戦レポート

新山響平(青森・107期)

ラインの力でつかんだ初タイトル

 北日本の新星の誕生に、歓声がドームに大きく響き渡った。
「先輩に前を走ってもらって、自分は番手を守ってしっかり優勝しなければいけない」
 4車で決勝に進んだ北日本勢。10月の仁親王牌でグランドスラムを達成したばかりの新田祐大に前を委ねる腹を決めた。その新山響平に、いつもの甘い表情はなかった。
「本来なら自分が前ですけど、本気で(G1の)優勝を狙いにいった時に新田さんの後ろの方が確率が高い。それで番手を回らせてもらうことになりました」
 昨年の競輪祭ファイナルでは逃げて準V。先行でのタイトル獲得が見えた瞬間でもあった。15年のデビューから徹底先行を貫いて、スピードも磨いてきた。それだけに番手回りは、並々ならぬ思いでの決断だっただろう。それは先頭を務める新田にも伝わっていないはずはなかった。6番手から持ち前のダッシュを生かして主導権を奪取。だが、それで勝負のカタがつくほど、楽なメンバーではなかった。坂井洋が新田後位に飛び付いて、最終ホームでは番手が併走になった。
「(番手を)譲る気はありませんでした。結果的に(自分が)番手から出ていった。けど、新田さんがあのまま(ペースを)上げていけば、転んででも坂井君をつぶすくらいの気持ちでした」
新山の初タイトルのお膳立てをするように、守澤太志が平原康多を封じ込める。内の坂井を見る形から、新山は自力に転じる選択をした。
「(まくりを打ってからは)余裕があったので、ゴールまで踏める自信がありました。ただ、(後ろは)どうなっているか、わからなかった。(後続が迫る)車輪の音が聞こえるような気がして、ずっと踏みっぱなしでした」
 離れ気味に新山を追った守澤が、最終バックで郡司浩平のまくりをブロック。止められはしなかったが郡司のスピードが鈍り、直線を迎えた時には新山との差が大きく開いていた。
「(ガッツポーズは)決めていました」
 先頭でゴールを駆け抜けた新山は、1コーナーで右の拳を握り締めると、バックでは両手を上げてガッツポーズ。ファンの声援に応えた。
 今年は、変化の年でもあった。10月にナショナルチームから退いて、競輪に専念。それは自らの退路を断つことでもあった。
「(ナショナルチームに所属していた時は)競技をやっている時は、競輪がダメなら競技、競技がダメなら競輪っていう甘い考もあった。競技をやめて、競輪でしか走るところがなくなった。より一層緊張感をもって走れていると思います」
 これまで北日本の先頭で幾度となくチャンスメイクをしてきたからこそ、先輩の盛り立てがあった。タイトルホルダーの仲間入りを果たし、初めてのグランプリが待っている。
「(16年に初めてG1優出した競輪祭決勝では)新田さんに迷惑を掛けて、今回はお世話になった。今度こそ恩返しができる走りがしたい。グランプリのことはハッキリ言ってあまり考えていなかった。でも、G1を獲るっていうことはそういうことでもあった。しっかり練習して、北日本で優勝を出せるように頑張ります」
 同地区の誰もが心から祝福できる魅力と、それだけのことを競走で魅せてきた。年末の大一番、初めてのグランプリだが、新田をはじめ3人の先輩がいる。今度は先頭で。新山に迷いはないだろう。

 まくった郡司浩平は、仕掛けのタイミングが遅れて、スピードに乗り切った新山を追いかける。守澤のブロックでスピードも失速。新山を脅かすまでには至らなかった。
「赤板で(北日本勢が)来なかった時点で、一発カマシでスピードに乗せてくると思った。そうなれば坂井君も踏むと思った。あとは緩んだところでと。ちょっと(最終)ホームで見ちゃいましたね。成田さんの動きもそうですし、その前の守澤さんと平原さんのところも。そこで見ながら詰まっちゃったんで、ワンテンポ遅れましたね。あそこで仕掛けていれば、結果的に(最終)1コーナーで苦しくても、新山君の後ろにスポッとハマれたかなと」

 同県の郡司に続いた小原太樹が3着。19年高松宮記念杯に次ぐ2度目のG1決勝でも表彰台にあがった。
「結構、守澤さんのブロックがキツくて、(郡司)浩平のスピードが止まっちゃった。自分も1回スピードを殺してからだった。そのあと浩平もタイミングがズレて伸びていく感じでしたね。最後は優勝はなくても、理想を言えば浩平を抜きたかったです」

  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です

レース経過

 号砲と同時に平原康多、郡司浩平、新田祐大の内枠3人が一斉に飛び出すが、再内枠の平原が譲らず正攻法の位置を確保。坂井洋−平原の関東勢が前受けし、その後ろは郡司−小原太樹の神奈川コンビがガッチリキープ。単騎の荒井崇博が続き、新田−新山響平−守澤太志−成田和也の北勢は後攻めとなって周回を重ねる。
 青板バックを過ぎて、坂井が徐々に誘導との車間を切って警戒が始める。さらに坂井は車を外に外して後方からの仕掛けを警戒していくと、荒井が内を機敏にすくって赤板で関東勢の後位まで車を上げる。坂井、郡司に見られながら、新田は2コーナーから発進。坂井も合わせようとして激しいモガき合いとなるが、新田のスピードが優って、最終ホーム手前で坂井をねじ伏せて主導権を奪取。叩かれた坂井は今度は新田後位に飛び付くいて新山と併走する。そのまま番手がモツれるかに、2コーナーに入ると迷うことなく新山はまくりに転じる。見る間に後続を突き放した新山を、郡司−小原の神奈川勢が追う。スピードに乗った郡司は着実に新山との差を詰めていくが、こらえた新山が2車差を付けてゴール。2着は郡司で、守澤にからまれながらしのいだ小原が3着に続いた。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 4 新山 響平 青森 107期 S1 11 まくり B
2 2 郡司 浩平 神奈川 99期 SS 2B 11 まくり
3 6 小原 太樹 神奈川 95期 S1 2B 11.1
4 5 荒井 崇博 佐賀 82期 S1 1B1/2 11.2
5 9 守沢 太志 秋田 96期 SS 1B1/2 11.5
6 1 平原 康多 埼玉 87期 SS 2B 11.4
7 7 成田 和也 福島 88期 S1 3/4B 11.5
8 8 坂井  栃木 115期 S1 4B 11.8
9 3 新田 祐大 福島 90期 S1 6B 12.6 H

児玉碧衣(福岡・108期)

地元トライアルを3年連続制覇

 児玉碧衣が、4番手で打鐘を迎える。6番手にいた柳原真緒を警戒しながら、前の3車を射程圏に入れてタイミングを計る。妹弟子の尾方真生が風を切り、児玉は最終1センターから満を持して発進。次元の違う加速で合わせる鈴木美教をあっさりとらえる。後ろからまくりで迫る柳原だが、並ぶところまではいかず、そのまま児玉碧衣が優勝。3年連続でトライアルを制した。
「めちゃめちゃうれしいの言葉しか出てこない。優勝すると、本当に気持ちがいい。大きいレースをなかなか勝てなくて、ガッカリさせることが多かったけど、有言実行の完全優勝ができてうれしい。ヤナギ(柳原)は半周勝負と思っていました。やっぱり一番警戒していた。前が駆けてからは、(尾方)真生も自力があって、(山原)さくらさんも強いので、ヤナギの動きよりは、前に踏むだけだった。ヤナギの前輪が見えて、意地になって踏みました。音も聞こえたし、自転車も見えた。前に出切れてからは、あとは抜かれるか、抜かれないか。抜かれたたら、また練習をしようって。やっと本来の自分のフォーム、踏み方に戻ってきている。不安は今日(決勝)で取り除けた。元女王っていうのは聞き飽きたので、(グランプリ優勝で女王に)返り咲けるように」
 4連覇に挑んだ昨年のグランプリは3着で涙をのんだ。女王奪還をかかげてリスタートを切った22年。地元の大舞台で力を見せつけて、年末の平塚を迎える。

 6番手の柳原真緒は、ラストの一撃にかけてじっと我慢。最終3コーナー過ぎに児玉をとらえにいったが合わされて2着。力差を痛感した。
「あの位置は思った感じで想定内でした。初日、2日目と児玉さんは自分以上の強い走りだったので、早めに仕掛けるっていう選択肢はなかった。追いかける感じになったけど、思ったより、青木(美保)さんも内に残っていました。吸い込まれる感じだったけど、ああいうところは自分が弱い。児玉さんが強くて、自分は弱い。それだけですね」

 尾方の先行。鈴木美教は、思惑通り2番手。V獲りの2角まくりで“決め打ち”に出たが、後続にのみ込まれて3着。
「想定通りすぎて、めちゃくちゃ緊張しました。(最終)2コーナーでは行くって決めていた。出なくても、行こうと。先に仕掛けて、その上を行かれたので、力不足でした。連日、差しだったので、今日(決勝)は強い人より前にと思っていた。悔しいは悔しいけど、やることはやりました」

  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です

レース経過

 尾方真生が前受けし、鈴木美教、児玉碧衣が続く。だが、山原さくらが前の方の位置を求めて、まずは鈴木と併走。鈴木が引かないとみると今度は児玉の外で併走する。結局、児玉が4番手に下げて山原が3番手の位置を確保し、以下は青木美保、柳原真緒、坂口楓華で周回。
 動きなく打鐘を過ぎて誘導は退避。押し出された尾方がそのまま主導権を握る。鈴木、山原は踏み出すタイミングを窺って前との車間を空けだし、児玉も後続の様子を見ながら車間を切っていく。最終ホームまで来たところで腹をくくった尾方が駆けだして一気にペースアップ。児玉が仕掛けたのは1センターからだった。グングンと加速していった児玉は、尾方と、合わせて2番手から仕掛けようとした鈴木の上を3コーナーで乗り越えて先頭に。児玉の先に仕掛けていた柳原が、猛然と迫っていって直線へ。しかし、児玉はしっかり踏み直して柳原を合わせ切って人気に応えた。3着は柳原を追ってきた坂口を制して鈴木が入る。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 児玉 碧衣 福岡 108期 L1 11.9 まくり
2 7 柳原 真緒 福井 114期 L1 1/2B 11.9 まくり
3 3 鈴木 美教 静岡 112期 L1 1B1/2 12.2
4 5 坂口 楓華 京都 112期 L1 1/4W 11.9
5 4 尾方 真生 福岡 118期 L1 1/2B 12.2 H B
6 2 青木 美保 埼玉 118期 L1 1W 12.1
7 6 山原 さくら 高知 104期 L1 1B1/2 12.2

佐藤水菜(神奈川・114期)

ワンチャンスをモノにして地元GPへ

 連日、圧巻のレースを披露していた佐藤水菜は前受け。打鐘3コーナーで太田美穂を送り出して、佐藤は2番手に入る。今度は5番手の梅川風子が、最終ホーム手前からアタック。梅川のスピードを冷静に見極めた佐藤が、梅川を追いかける。さすがのスピードを披露した梅川だったが、佐藤が車間を詰めながら直線の入口で並びかける。抜け出した佐藤が、3連勝で優勝。地元、平塚のグランプリチケットをワンチャンスで手に入れた。
「(このトライアルを優勝した)2年前と変わらず勝ちたいっていう気持ちでした。(ナショナルチームでの活動もあり、競技で実績も残して)激動の2年でした。この大会で優勝しないと、グランプリの出場権がなかったので勝たなきゃいけないっていう気持ちで挑んでいました。(勝てて)素直にうれしいです。正直、どの位置でもキツいレースだって思ってた。極力脚を使わず、冷静に考えられる時間が長く欲しかった。それで(周回中は)前にいきました。太田(美)選手の少しあとに、梅川選手が駆けているのが見えた。梅川選手に切り替えて後ろを警戒して、行けるところで行きました。みんなが来ているのもわかったので、前を譲らないように必死でした。12月8日が前検日の別府を走って、ちょっと練習してグランプリっていう感じです。明日から、別府、グランプリに向けての練習が始まる。(競技では)パリオリンピックでケイリンで金メダル獲ること。どの種目もですけど、チームスプリントで表彰台にのることを目標に頑張っています」
 競技のケイリン種目では、6月のアジア選手権で金メダル獲得し、アジアのトップの座に就いた。10月には世界選手権で2年連続の銀メダル。フロックではないことを証明してみせた。24年のパリ五輪に向けて、地元、平塚のグランプリのタイトル獲得して、充実の22年を締めくくりたい。

 6番手の小林優香は、前の梅川の仕掛けに反応できない。結果的に自分で踏み上げる苦しい流れになったが、太田りゆに踏み勝ち2着で底力を見せた。
「初手は、理想の位置でした。(太田)美穂さんが先に仕掛けて、彼女(梅川)が仕掛けた時に待ってしまった。そこがひとつの敗因かなと。キツい位置から2着まで来られたので、(最終)ホームの仕掛けで(付いていって梅川の)番手に入れていればおもしろかった。この状態のなかで(3日間)2、3、2着は、ある程度まとめられた。来年は、この時期(トライアルが始まる前)にグランプリを決めていられるようにしたいです」

 最終ホームで7番手の太田りゆは、最終2コーナーから外を仕掛ける。佐藤は遠かったが、小林優に迫る3着。
「前の様子が全然わからなかった。落ち着いて行けるところから、自分は自分の仕掛けをしようと。優勝こそできなかったけど、納得はしてます。3日間、いいレースができたし、競輪選手としてステップアップできた。みんな強かったなかで、あんだけできたのは実りのある開催だった」

  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です
  • 優勝者の写真です

レース経過

 見合ったスタートから石井寛子が出かけるが、佐藤水菜が上がってくると出させて2番手の位置を確保する。佐藤には小林莉子が続いていたが、石井との併走になりかけると下がっていく。しかし、6番手、7番手を嫌った太田りゆ、小林莉子は再度踏み上げて中団位置に入り、最終的に佐藤、石井、小林莉、太田り、小林優香、太田美穂、梅川風子で落ち着いて赤板周回を迎える。2コーナーで太田美から上昇を始めるが、梅川は途中で太田美を追うのを止めて太田りの前に入る。結局、太田美は単独で上がっていって打鐘3コーナーで佐藤を叩いて主導権を握る。2番手を確保した佐藤が大きく車間を切って後続の反撃に備える中、最終ホーム手前で梅川が一気に巻き返す。佐藤は梅川を行かせて、今度は梅川の動きを追う態勢に切り換える。梅川は太田美を2コーナーでまくり切って後続を突き放しにかかるが、追って踏み出した佐藤はグングン詰め寄っていく。石井は踏み遅れて、後方から仕掛けた小林優、太田りが佐藤を追って直線へ。梅川を直線半ばで抜き去った佐藤が、小林優、太田りの追撃を許さず、グランプリへのラストチャンスをモノにした。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 4 佐藤 水菜 神奈川 114期 L1 11.7 追込み
2 1 小林 優香 福岡 106期 L1 1B 11.7 マーク
3 7 太田 りゆ 埼玉 112期 L1 1/2B 11.7
4 3 梅川 風子 東京 112期 L1 1W 12.2 B
5 6 小林 莉子 東京 102期 L1 1B 11.9
6 2 石井 寛子 東京 104期 L1 3B 12.3
7 5 太田 美穂 三重 112期 L1 5B 12.7 H