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決勝戦レポート

新田祐大(福島・90期)

新田祐大の独壇場

 今年最後のGIは、新田祐大のひとり舞台。6月高松宮記念杯から続いた4度のGIファイナルステージはすべて“新田色”に染まった。
 「深谷(知広)の動き待ちになって、全体的にレースが流れていた。深谷の動きを待ってるなかで自分のタイミングの位置まで来たんで、あとはガムシャラに踏むような感じになりました」
 山中秀将が主導権。8番手に置かれた深谷は反撃のタイミングを逸して、レースは比較的に単調に流れた。木暮安由に3番手を明け渡したものの、今の新田には6番手があれば十分だった。
 「ホーム過ぎから(1)センター過ぎぐらいに踏み込んだんですけど、なかなか山中君との距離が縮んでいかなかったので、けっこうまずいかなと思った」
 最終1センターから踏み込んだ新田は、タッグを組んだ諸橋愛を置き去り。自身の心配とは裏腹に、ケタ違いの加速力で2着以下をちぎってゴールを駆け抜けた。
 「(優勝を確信したのは)本当にゴール線を過ぎた瞬間ですね」
 上がりタイム10秒6を叩き出した今年2度目のGI制覇は、高松宮記念杯、オールスター、寛仁親王牌と同様に別線に手出しをさせない異次元のまくり。オールスター、寛仁親王牌は後ろの渡邉一成に優勝をプレゼントする結果になったが、今年は2人合わせてGIを4勝。その4勝はすべて新田がつくりだしたものだった。
 「(今年は)前半戦がなかなかこういいレースがでなかった。ナショナルチームのトレーニングも1月から始まって、新転地にも移りましたし、そのなかで結果を残し続ける大変さっていうのを実感した半年間だった。高松宮記念杯を優勝してから、常に勝ちを意識するレースをすることができた後半戦だったと思います」
 ナショナルチームが新体制に移行して、新田にとっても練習環境をはじめさまざまな変化があった17年。3年連続4回目のグランプリで新田劇場は、今年のフィナーレを迎える。
 「本当にこの1年間でいろんなことがあって、めまぐるしい1年間だったと思います。変わったこと、変わらなかったこと。進化、退化といろいろな部分がありました。そのなかで僕は年末のグランプリに向けて目標を早い段階で掲げることができたので、そこに向けて本当にまっしぐらに練習一本という形で日々、練習し続けた。その結果、このように競輪祭も優勝することができました」
 競技でのカナダ、チリ遠征を控え、多忙を極める新田だが、大一番のグランプリにはきっちり照準を定めている。世界を股にかける男の規格外の進化はまだ始まったばかりだ。
 
 新田が諸橋をちぎって木暮を飲み込むと、新田目がけて北津留翼も外を踏み込む。木暮後位から抜け出す平原はとらえたが、前を行く新田には届かなかった。
 「(作戦は)スタートを取るか取ったラインの後ろか。(関東の後ろ)ここはいいなと思ってました。ホームで外が空いてるかどうかが勝負だと思ったけど一本棒でアレッ?と思った。でも、ビビらず先に行けばよかったですね。声援もすごかったんで、新田より先に行かないといけなかった」
 
 3番手を確保した木暮が先まくり。関東コンビは絶好の展開になったが、新田のスピードに屈した。3着の平原康多は新田の強さを称えながら、大粒の汗をぬぐう。
 「強い。新田じゃなかったら(木暮と)ワンツーが決まってたかもしれない。力で勝てなかったんで、また頑張るだけ。新田にいい刺激をもらいました」
 
 3番手を確保した木暮安由にとっては初タイトルを狙える展開だった。先まくりに出たが結果は4着。それでもサバサバした表情でレースを振り返る。
 「平原さんが付いてくれてるんで、かぶる前に仕掛けようと思った。気配がしたので踏みました。スンナリな展開でしたけどね。いい経験はできました。次につながるかなと思います」
 
 後ろ攻めから動いた山中秀将だったが、続く動きはなし。もはや残された選択肢は腹をくくることしかなかった。
 「普段まくり主体にやってるんで、前になったときに泳がされる。その辺が課題ですね。位置を取るにしても先行を含めていかないと。あれで先行とは言えないんで。4コーナーまで持ってはじめて先行と言えると思うし、脚力と技術を磨いていきたい」
 
 新田のダッシュに離れた諸橋愛は「今のなかでの限界。加速がすごい。自分も万全じゃなかったけど、(平原)康多とは違うダッシュ力。あれは無理」とガックリ。それでも、この悔しさを年末のグランプリへの原動力とするはずだ。
 
 深谷知広にとっては消化不良の決勝戦。「(新田が)強すぎます。力の差は埋まらないと思うんで、作戦と走り方。(グランプリへ)やれるだけやって頑張ります」と言葉を振りしぼった。
  • 優勝者の写真です
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レース経過

 号砲で平原康多がゆっくり出て、目標の木暮安由を迎え入れる。以下は北津留翼、新田祐大-諸橋愛、深谷知広-金子貴志、山中秀将-渡邉晴智の順で落ち着き、周回を重ねる。
 青板周回の2コーナーから山中がゆっくり上昇を始めるが、このラインは誰も追わない。3コーナーで山中に並びかけられた木暮は車を下げない。山中は赤板前に誘導員を下ろして先頭に立つ。3番手に木暮が収まり、5番手に北津留、6番手に新田、深谷は8番手の態勢に。後続の様子を確認しながらピッチを緩めていた山中は打鐘から一気にペースを上げる。快調に逃げる山中に対し、3コーナーで外した深谷も結局、仕掛けられずに一列棒状の態勢で最終ホームを通過する。2コーナーで3番手の木暮、6番手の新田がほぼ同時にスパート。マークの諸橋が離れるほどのスピードで迫った新田が先まくりの木暮を2センターでとらえると、そのまま後続を突き放して圧勝した。3コーナーから外を踏み込んだ単騎の北津留が2着に。木暮のまくりを直線で交わした平原が3着に入った。
 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 1 新田 祐大 福島 90期 SS 10.6 まくり
2 4 北津留  福岡 90期 S1 2B 10.7 まくり
3 5 平原 康多 埼玉 87期 SS 1/2B 11 追込み
4 8 木暮 安由 群馬 92期 S1 3/4B 11.2
5 2 諸橋  新潟 79期 S1 1B 10.9
6 6 渡辺 晴智 静岡 73期 S1 1/2W 11.2
7 3 金子 貴志 愛知 75期 S1 1W 10.6
8 7 深谷 知広 愛知 96期 S1 S 10.8
9 9 山中 秀将 千葉 95期 S1 D 12.4 H B