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たまの競輪

TAMANO KEIRIN

61#

決勝戦レポート

佐藤水菜(神奈川・114期)

世界基準のスピードで完全V

 次元の違うスピードで3日間を駆け抜けた。ナショナルチームでは6月のアジア選手権のケイリン種目で優勝。前回の平塚のオールガールズでも、佐藤水菜は3連勝の完全Vを遂げていた。
「率直に1周を逃げて、逃げ切れたことはうれしいです」
 尾方真生、児玉碧衣らを前に見る5番手に構えた佐藤水菜は、打鐘の4コーナーから強烈なダッシュで前団に襲い掛かる。3番手の尾方、4番手の児玉も合わせて踏んだが、佐藤のスピードが違った。
「前に尾方さんと児玉さんって強い自力選手がいた。尾方さんよりも先に出ようと思っていました。尾方さんが仕掛けにくいタイミングで行くことだけ決めていました。私は自分のタイミングで行けるアドバンテージがあったので、前だけ見て走りました」
 最終1センターで出切った佐藤は、そのままスピードに乗せて2番手以下を引き離す。しかしながら、2番手に飛び付いた山原さくらが、車間を詰めて4コーナーで佐藤を射程圏に入れる。直線は両者の勝負に持ち込まれるかに思われたが、佐藤がもう一段階ギアを上げる。終わてみれば4分の3車身。着差以上のセーフティーリードを保ってゴールを先頭で駆け抜けた。
「後ろに強い選手に入られても、ゴール前で抜かれないように走りました。得意の戦法の1つができたのかなって。雨の時はバンクが軽いと思っているので、マイペースでいきました。日に日に緊張感も高まってきて眠れなかったんですけど、高いレベルで走れることは貴重なので気持ちで乗り切りました」
 アジアのケイリン女王が、ガールケイリンでもノリに乗って連勝街道を突き進む。

 2番手からレースを進めた鈴木美教は、佐藤がカマしで先頭に立つと飛び付いた山原を追走してじっとチャンスを待った。まくりを打った児玉がいて外のコースを塞がれると、佐藤と山原の間を伸びた。
「道中はすごく余裕があったし、周りが見えていた。(児玉と)あそこでかぶらなかったら、自分も外を踏みたかった。それで内を踏むかたちになったけど、かなり伸びていた。ここに来るまでにスピード練習をしっかりして、ナショナルチームとかの人たちのレースでスピードが上がっても周りを見られた。そこが収穫です」

 前を取った山原さくらは、自分のスタイルで完全燃焼。佐藤のスピードには屈したものの、児玉、尾方らをまくらせず3着に入った。
「(このメンバーで)脚が一番ないので、自分で行くしかないと。昨日(2日目)もそれで確定板にのれた。それしか方法がなかった。(最終)バックでは一瞬、夢をみたんですけど。(佐藤が)本当に強かった」

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レース経過

 スタートは内枠の尾方真生、山原さくらが飛び出し、山原が誘導員の後ろを占めた。山原、尾方、児玉碧衣、佐藤水菜、太田りゆ、吉川美穂、鈴木美教となったが、最後方の鈴木が踏み上げて尾方の外に並び掛ける。山原の後ろはしばらく併走が続いたが、2周目に尾方が下げた。
 赤板ではまだ動きはなく、山原、鈴木、尾方、児玉、2車身ほど車間をあけて佐藤、太田、吉川の一本棒。打鐘で誘導員が退避すると、押し出される格好で前に出た山原に、鈴木、尾方、児玉がそれぞれ車間を空けはじめる。最終ホーム手前の4コーナーで佐藤がスパート。気づいた山原、尾方、児玉も踏み込むが、スピードで優る佐藤が1センターで先頭に躍り出た。太田は佐藤に続けず、2番手は内に山原、中に尾方、外に児玉の3車で併走に。まず尾方が遅れ、児玉も3コーナーで力尽き、佐藤、山原、鈴木で最後の直線へ。3コーナーでは佐藤と1車身ほど空いていた車間を詰めて佐藤を抜きに行った山原だが、佐藤が踏み直して堂々の押し切り。ゴール前で佐藤と山原の間に突っ込んだ鈴木が2着に入り、山原は3着。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 3 佐藤 水菜 神奈川 114期 L1 11.9 逃切り B
2 5 鈴木 美教 静岡 112期 L1 3/4B 11.7 追込み
3 2 山原 さくら 高知 104期 L1 1/8W 11.8 H
4 7 児玉 碧衣 福岡 108期 L1 1B 11.9
5 1 尾方 真生 福岡 118期 L1 1/2B 11.7
6 6 吉川 美穂 和歌山 120期 L1 1/2W 11.8
7 4 太田 りゆ 埼玉 112期 L1 2B 12

松浦悠士(広島・98期)

冷静な立ち回りでサマーナイトF連覇

「(地元地区で連覇のかかるサマーナイトフェスティバルに)勝たなきゃいけないプレッシャーはないけど、勝ちたいっていう欲はある」
 昨年のサマーナイトフェスティバルのチャンプ。地元地区のS級S班として重責。それらを背負いながらも、松浦悠士はあくまで自然体。前検日もこうリラックスムードで笑った。
今シリーズの準決を含めて、犬伏湧也とは3度目のタッグ。初めての連係だった7月の小松島記念の二次予選とは違い、頼れるパートナーの走りはインプットされていた。
「(犬伏が)自分が優勝できるレースというのをしっかりつくってくれた。その頑張りに応えられたなって言うのがありますね。今日(決勝)は昨日ほど目いっぱいって感じじゃなくて、しっかりいいペースというか、残れるように駆けたかなって思った。ワンツーを狙って仕事しようと思ったんですけど。(最終)ホームでグーンと1回掛かり切って、もうそのままいけるかなって思ったんですけど。ちょっと3コーナーあたりから失速してきた。3回目の連係になりますし、そういうところは、彼の脚力っていうか踏み方とかがわかってたところが大きかったかなと思います」
 打鐘過ぎに先頭に立った犬伏が主導権。犬伏にとっては決勝はおろか、今シリーズが初めてのビッグ。計り知れないほどの緊張のなかで、敢然と先行策に出た。内から進出した山田英明が3番手を奪取。最終1センターからまくった新田祐大は、あおりもあって伸びは一息。松浦に焦りはなかった。
「新田さんが後ろになっているのもわかりましたし、内を空けても(佐藤)慎太郎さんが入ってくるという心配もなかった。それでしっかりギリギリまでは待てたのかなと思います。本当、(岩本俊介に)最後のみ込まれなくて良かったなって感じですね」
 山田のまくりは不発で、荒井崇博が松浦後位に切り替える。今度はバックから岩本がまくって直線は松浦と岩本の勝負になったが、松浦が岩本に体を寄せて柔軟なハンドル投げで僅差の争いを制した。
「(連覇は)うれしいですし、(清水)裕友と合わせれば3連覇。(ファンには)連日、たくさん応援していただいて、その期待に応えることができたかなって思います」
4月の郡司浩平と優勝を分け合った川崎記念以来となる優勝。「ファン投票も2位に選んでいただいたので、そういう期待に応えるようなレースを後半戦もしっかり見せていきたい」と、2度目のオールスターVに向けて松浦がサマーナイトフェスティバル連覇で弾みをつけた。

 最終ホームでは新田との併走になった岩本俊介だが、5番手まくりで松浦を脅かした。
「(打鐘前に)山田さんにしゃくられたのは痛かった。でも、そのあとも体はしっかりと反応しているし、行ける準備もしていた。昨日(2日目)に比べて吹っ切れて踏めていた。今日に関してはあれ(仕掛け)がベスト。(思いのほか)伸びたんでおったまげた(笑)」

 まくり不発の新田から最終バックで岩本後位に切り替えた佐藤慎太郎は、こう振り返る。
「最後ゴール前で優勝争いをしたかった。そう考えると岩本の外じゃなくて、内だったかな。瞬間的に判断ができなかった。強い新田が戻ってきたのは、うれしいですね。新田がいるからいまの俺があると思っている。やっぱり新田の存在はデカいですから」

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レース経過

 号砲で新田祐大、佐藤慎太郎が飛び出し、新田-佐藤の福島勢が前を固める。これに山田英明-荒井崇博の佐賀勢、更に犬伏湧也-松浦悠士の中四国勢が続き、単騎の森田優弥はこの後ろ。岩本俊介-和田健太郎の千葉勢が後ろ攻めとなった。
 青板周回の3コーナーで岩本-和田が上昇開始。岩本が先頭に並びかけると山田-荒井がこれに続く。赤板過ぎに岩本が新田を押さえて前に出ると新田は岩本-和田、山田-荒井の5番手まで車を下げた。2コーナーで犬伏-松浦が仕掛け、合わせて佐賀コンビが千葉勢の内を突く。2センターで出切った中四国勢には、佐賀コンビが続く。森田は中四国勢に続けず、懸命に追い上げるが最終ホームで力尽きる。一方、8番手に置かれた新田は3コーナーから踏み上げ、最終ホームでは5番手の岩本の外で併走になった。最終2コーナーを立ち直ったところから山田が踏み込むが、松浦に見られて元の位置に戻ってしまい、荒井は山田の内に潜り込む。外々を回された新田は前団に迫れない。3コーナーで5番手の岩本がまくると、佐藤がスイッチ。好スピードで中四国勢に襲い掛かった岩本は、犬伏を交わして踏み出した松浦にゴール前で並んだが、松浦が岩本の強襲を4分の1輪凌いでサマーナイトフェスティバル連覇を達成した。岩本が2着で、3着には佐藤が続いた。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 2 松浦 悠士 広島 98期 SS 11.3 追込み
2 6 岩本 俊介 千葉 94期 S1 1/4W 11.1 まくり
3 7 佐藤 慎太郎 福島 78期 SS 3/4B 11
4 5 荒井 崇博 佐賀 82期 S1 3/4W 11.3
5 3 和田 健太郎 千葉 87期 S1 1/2W 11
6 9 犬伏 湧也 徳島 119期 S2 3/4B 11.7 H B
7 1 新田 祐大 福島 90期 S1 1B 11.3
8 8 山田 英明 佐賀 89期 S1 3/4W 11.6
9 4 森田 優弥 埼玉 113期 S1 1B 11.4