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84#

決勝戦レポート

平原康多(埼玉・87期)

30回目のG3制覇でダービーに弾み

 「全部任せてました。(吉田)拓矢の行けるタイミングで行ってもらえれば」
 4車のロングラインができあがった関東勢。番手の平原康多は、同じS級S班の吉田に注文をつけることなく全権を委ねた。ただ、平原にとっては、吉田の不発だけが誤算だった。
 「連日の拓矢の強さを見てたんで、行き切れないことは想定してなかった」
 3番手から叩きに出た櫻井正孝を突っ張り、稲川翔が腹を固めて逃げる。前団の隊列が短くなったところを吉田が、最終ホーム目がけて踏み込む。が、準決のようなスピードがない。バックを通過して、平原はギリギリの判断を迫られた。
 「自分の横に(佐藤)慎太郎さんがいたんで、隙を見せられなかった。すごい動きだった。正直、届くか届かないか半信半疑だった。僕も後ろに2人(諸橋愛、木暮安由)を背負ってたんで、どこかで踏まないと。拓矢がタレてきてから踏み上げた。落車がなかったら、間に合わなかったんじゃないかと」
 吉田が失速すると、平原は3コーナー過ぎから外を踏み上げる。直線では近畿勢の中を割る佐藤と村上義弘が接触して、両者が落車。諸橋、大坪功一が巻き込まれる大量落車が起きた。結果的には楽に抜け出した平原だが、アクシデントもあり手放しでは喜べない。
 「(落車があったんで)ちょっと複雑な気持ちですね。自分のなかでは(踏むのが)遅かった。ああいう判断をしっかりとしないと、うまくいくことばかりじゃない」
 まさに“勝って兜の緒を締める”。06年11月の別府で初のG3制覇から数えること30回目の優勝にも、平原は慢心することがない。
 「4日間厳しい戦いだったけど、実戦でしか得られない経験ができた。(30回目のG3優勝だけど)あんまり過去を振り返らないんで。ここで終わりじゃないし、日本選手権に向けて気持ちを上げられれば。優勝したことで気持ちを切らさないようにしたい」
 通算8度のG1制覇を誇る平原だが、まだ日本選手権(ダービー)のタイトルは手にしてない。5月3日から平で始まる輪界の頂上決戦、ダービーに平原の気持ちはすでにスイッチしている。

 平原が外を踏み込むと、諸橋は最終4コーナーから内に進路を取る。関東ラインのシンガリを務めた木暮安由は、外を踏んで2着に届いた。
 「(内は)渋滞していたし、危ないにおいもした。諸橋さんがどっちに行くかを見て、あそこに行きました。3日目からギアを(前が)51枚にしたのが正解。そこから反応が悪くなかったし、全然違った」

 キーマンの1人でもあった稲川翔は、村上義弘を連れて先行策。櫻井、吉田ともに不発に追いやったスピード感は、復調を感じさせるものだった。
 「スタートが出遅れたけど、前が取れた。前なら全部のことができるし、運びやすくなる。腹もくくれた。村上さんが前に踏んだら(優勝に)いけたかなと。僕のことをかばってくれて、そこら辺は紙一重ですね。それで村上さんが落車してしまった。自分はどんなピッチで駆けているのかわからなかったけど、絶対に4コーナーまではやめたらいけないとガムシャラだった。自分の状態とかはわからないけど、レースのなかでは思い切りが出ているのかなと」

 打鐘の4コーナーから踏み込んだ吉田拓矢は、切り替えた佐藤のけん制もあって前団をつかまえ切れなかった。
 「昨日(準決)とかに比べると重かった。力みがあったのかなと。後ろに迷惑を掛けてしまいました」

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レース経過

 稲川翔-村上義弘の近畿コンビが前受けし、以下は、櫻井正孝-佐藤、大坪功一、吉田拓矢-平原-諸橋愛-木暮安由で周回。
 隊列に変化なく赤板周回に入り、打鐘を迎えても誰も仕掛けない。後方に構えたまま吉田は動かず、先に櫻井が3コーナーで踏み出す。だが、稲川には櫻井に切らせる気はなかった。櫻井を突っ張った稲川が腹をくくってそのまま先行態勢に入る。佐藤は機敏に内に降りて近畿勢後位を確保。そこに最終ホーム線を目掛けて吉田がカマしてくる。ところが逃げる稲川の掛かりが良く、吉田は車の進みが悪い。吉田は3コーナーでようやく村上の外まで上がったものの、直線に入ると稲川を捕らえれないまま失速。吉田の動きを見極めた平原は車を外に持ち出して自らタテに踏み出す。ゴール寸前で稲川を庇おうとなおも踏み出さない村上に対し、佐藤が中割りに行ったところでアクシデントが発生した。村上と佐藤が絡んで落車し、これに後続の諸橋と大坪も乗り上げる。結局、外を踏んでいた平原が落車に巻き込まれることなく突き抜けてV。平原のさらに外のコースを踏んだ木暮が2着に続き、3着には稲川が逃げ粘った。

 

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 3 平原 康多 埼玉 87期 SS 11.5 追込み
2 5 木暮 安由 群馬 92期 S1 1B1/2 11.3 追込み
3 2 稲川  大阪 90期 S1 3/4W 11.9 H B
4 9 吉田 拓矢 茨城 107期 SS 1B1/2 11.9
5 6 桜井 正孝 宮城 100期 S2 3B 11.7
6 8 大坪 功一 福岡 81期 S2 3/4B 12.1
7 4 村上 義弘 京都 73期 S1 3B 12.6
8 1 佐藤 慎太郎 福島 78期 SS 2B 12.6
9 7 諸橋  新潟 79期 S1 0