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しずおか競輪

SHIZUOKA KEIRIN

38#

決勝戦レポート

古性優作(大阪・100期)

単騎でグランプリを初制覇

「近畿が1人になって心細かったんですけど、近畿の選手として恥ずかしくない走りができればと思ってました」
 単騎でのグランプリ。関東勢は3車で強固な布陣。中国コンビは3年連続での連係になり、郡司浩平には北日本勢が付いて3車のラインができあがった。ただ、古性優作は攻める気持ちを失ってはなかった。
「自分の力はどんなもんかと思って一生懸命、仕掛けました。脇本(雄太)さんのおかげG1を獲らせてもらったけど。自分の力でも獲れるって証明したかった」
 初戴冠となった8月のオールスターでは、脇本が先行策で別線を完封。番手を回った古性が差し切った。「近畿のラインに助けられた1年だったなと思います」と、グランプリ前に今年を振り返った。それだけに1人で初のグランプリは、近畿勢の代表として、すべてを背負う覚悟だった。
「近畿勢の先輩方もみんな連絡をくれました。そのプレッシャーを楽しんで走るのは、二流選手だと思ってます。そのプレッシャーをしっかり背負って走れたので、近畿勢のみなさんに感謝したい」
 上昇した清水裕友を阻んだ郡司が、関東ラインの3車を受ける。関東勢に続いた古性は郡司と一瞬、重なったものの、郡司が下げて単独で4番手をキープした。妥協を許さない古性の一戦、一戦の積み重ねが生んだポジションだった。逃げる吉田拓矢の番手から宿口陽一がまくりに出るとほぼ同じタイミングで、古性が踏み込む。これ以上ないタイミングは、12年、憧れの村上義弘が単騎でグランプリを初めて獲ったあの時と姿が重なった。
「(最終)ホーム前はいい感じで間合いが取れてたんですけど、ちょっと詰まりすぎてしまった。詰めすぎてしまったのでヤバいなと思った。だけど、とにかくここしかないかなと思って、1センターくらいから思い切りいきました」
 番手まくりの宿口陽一を最終3コーナーでのみ込むと、後続の影はない。それでも18、19年と記念を制覇している静岡バンクの直線は長く感じた。
「なんで(ゴールが)来えへんのかなって。すごくファンのみなさんの応援があって、直線長かったんですけど。すごく声が聞こえてきた。なんにか不思議な感覚だった。本当にファンのみなさんに感謝したいです」
 終わってみれば2車身差の完勝だった。ゴールした古性が、ファンに両手が上げてアピール。大阪から初のグランプリ王者が誕生した。
「来年は自分の力で、いっぱい近畿勢がグランプリを走れるように。自分がしっかり頑張っていきたいなって。デビューした時からグランプリを見てきましたし、まさか獲れるとは思っていなかった。来年は(グランプリチャンプの)1番車に恥じないようなレースで、しっかり近畿勢を引っ張っていける選手になりたい」
 “ひとりじゃない”。近畿に育まれ賞金王に就いた古性は、これからも計り知れないプレッシャーから逃げることなく、仲間ともに歩んでいく。

 関東3番手の平原康多は、宿口をピタリとマーク。単騎の古性にスイッチすることなく清水を張って直線で追い込んだ。
「悔しいですけど、出し切って負けた。宿口もやることやってくれましたし、あの上を行かれた。自分があの上を行くわけにはいかないですし、古性が強かったですね」

 最終バックではコースがなかった郡司浩平は、外の松浦悠士を弾くも中のコースを踏んだ。
「古性君はヨコが強いですし、あそこ(4番手)でやっても仕方ないですからね。やるなら(吉田の)番手でって思っていました。古性君もサラ脚でしたし、まくっていくだろうと思ったんですけど。清水君に締められて苦しくなりました。1着を取るためにレースをつくらないといけなかったですし、ラインとしても優勝を狙える仕掛けができなくて悔しい」

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レース経過

 号砲で内枠の選手が飛び出すが郡司浩平が誘導員の後ろを取った。郡司の後ろを選択していた佐藤慎太郎−守澤太志の北日本勢が続く。中団は清水裕友−松浦悠士の中国コンビが占め、後方は吉田拓矢−宿口陽一−平原康多の関東勢。単騎の古性優作が最後方。この並びでしばらく静かな周回を重ねる。
 赤板前の2センターで郡司が誘導員との車間を空けはじめ別線の動きに備えると、清水裕友−松浦悠士が踏み上げる。赤板で郡司は清水を突っ張ると、中国コンビに続いていた吉田がすかさず主導権を狙って発進。吉田−宿口−平原の関東勢に単騎の古性まで続き、郡司は5番手、清水は8番手で打鐘。先頭に立った吉田はまったくペースを緩めることなく軽快に飛ばす。最終ホーム手前の4コーナーから清水が反撃を開始するも8番手からでは前は遠い。清水は2コーナーでようやく古性の後ろまで進出したが、2コーナーを立ち直ったところからほぼ同時に吉田の番手から宿口、4番手の古性が仕掛けた。スピードは古性が圧倒的に優っていて、あっという間に前団を飲み込み3コーナーで先頭に。清水は古性と車間が空いてしまい、更に3コーナーで平原に捌かれて万事休す。後続を千切った古性の脚勢は最後まで衰えず、2着以下に2車身の差を付けてグランプリ初出場ながら初Vを達成した。直線半ばで宿口を交わした平原が2着に入り、4コーナーから平原を追う形で伸びた郡司が3着。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 4 古性 優作 大阪 100期 SS 11.4 まくり
2 3 平原 康多 埼玉 87期 SS 2B 11.6 追込み
3 2 郡司 浩平 神奈川 99期 SS 1/2B 11.5
4 5 佐藤 慎太郎 福島 78期 SS 3/4W 11.5
5 1 松浦 悠士 広島 98期 SS 1/2B 11.6
6 6 守沢 太志 秋田 96期 SS 1W 11.3
7 8 宿口 陽一 埼玉 91期 SS 1/4W 11.9 B
8 9 清水 裕友 山口 105期 SS 3B 12.1
9 7 吉田 拓矢 茨城 107期 SS D 0 H

北日本タッグでV奪取

 昨年のヤンググランプリに続いて、今年も北日本は同じ顔。高橋晋也とともに小原佑太が、この舞台に帰ってきた。ただ、違ったのは前後の並び。小原が前でチャンスメイクをした昨年に変わり、高橋に前を委ねた。
「(高橋)晋也さんは昨年の時点で、来年は前でやるとおっしゃっていた」
 1年前の約束だった。そしてその高橋とワンツーを結実させた。
「(ゴールして自分の優勝はわかったので)あとは晋也さんがどれくらい残ってるかなと思った。そしたら晋也さんが2着だったって言ってたので、無事にワンツーだったんだって」
 右手を高く突き上げたウイニングランに高橋が寄り添って勝者をたたえた。
 レースは町田太我の主導権。もつれた番手に飛び付いた高橋が山口拳矢をさばいて番手を奪い、小原が続いた。
「町田君が行くところを飛び付いてと。(高橋が)しっかり飛び付いた時点で、ボクもちょっと車間を空けてた。それで誰か来たらなるべく合わせるような感じでと思っていたんですけど、晋也さんが強かったですね。あそこまできたらなるべくワンツーという気持ちもあった。(最終)3コーナーで自分が外に持ち出したら、晋也さんも踏み出していた。これだったら大丈夫だと思った」
 普段は持ち前のスピードを生かして風を切り、北日本勢をけん引している。それだけに不慣れな番手回りだったことは想像に難くないが、心憎いまで落ち着きはらった立ち回りだった。4番手からまくる坂井洋を阻むと、最終3コーナー過ぎに外に持ち出しVロードを確保。あとは高橋の余力を見極めながら抜け出した。
「今年に入ってからG2を走らせていただけるようになった。やっぱりG2になると、F1、G3よりも全然上なものと感じた。共同通信社杯の時に準決までいけたんですけど、その舞台で優勝しないとグランプリもないですし、しっかりそこで勝ち切るという強い気持ちがないと。(来年の競輪の目標は)グランプリに乗れるくらいの賞金であったり、結果を出せるように頑張りたい」
 一昨年7月にデビューした時からナショナルチームに所属している小原にとっては、競輪と競技ともに力を注いできた。
「(競技の目標はパリ五輪に向けた)オリンピックポイントが来年から始まるので、しっかり世界選であったり、ネーションズカップで勝って、ポイントを積み重ねていいきたい」
 今年のグランプリは佐藤慎太郎、守澤太志。北日本勢は追い込み選手が2人で機動タイプは不在。高橋とともに。来年はグランプリの舞台に立ちたい。

 町田の番手を奪取した高橋晋也が2着。
「町田君が強かったです。ドンドン伸びて行ってキツかったですね。結果(小原と)ワンツーだったので良かったですけど。1回動いてから誰も来なければ駆けるつもりで、町田君が来れば番手にいくって決めていました。去年は小原君が頑張ってくれたけど、迷惑を掛けてしまった。今年はその分もって頑張りました。優勝したかったですけど、最高のワンツーです。自転車もマッチしてきて良くなってきている」

 単騎の寺崎浩平は9番手まくりではさすがに前が遠かった。力を見せたものの3着。
「2回目に切ったラインについていこうと思ったんですけど、赤板で思ったよりもペースが上がってしまった。ゴチャついたのもあっていったん、落ち着いてからと思いました。でも、一番やっちゃいけない展開でした。最後は意外と伸びたけど、もうちょっとなめるようにいきたかった。ちょっと落車だけが怖くて外々をいってしまいました。感触自体は思いのほか良かったので、収穫はあったと思います」

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レース経過

 坂井洋が正攻法の位置を確保し、坂井-佐々木悠葵、高橋晋也-小原佑太、山口拳矢、伊藤颯馬、寺崎浩平、町田太我-石原颯で周回。
 青板2コーナーで町田が動き出すが、高橋がけん制しても簡単に上がらせない。それでも町田が赤板ホームから踏み出すと、高橋は合わせてダッシュして先に前団を切って待ち構える。そこを町田が叩いて打鐘手前から先制。しかし、町田には機敏に石原を捌いた山口が続いてきており、さらにその山口をドカして高橋が最終的に町田の番手を奪い取った。町田の先行に、北コンビが続き、4番手が坂井、伊藤、山口で持つれる形で最終周回へ。バックでようやく抜け出した坂井がまくるも、小原のけん制で失速。直線に入り、粘る町田を高橋が交わすところを、その外を踏んだ小原が一気に突き抜けた。終始、最後方で動かずタイミングをうかがっていた寺崎は、最終バックから猛然とまくったものの3着までだった。

夢のグランプリ制覇

 小林優香が奇襲のカマシ先行に出て、2番手の石井寛子は車間が空きながら追いかける。3番手の高木真備は最終2コーナーで後続の仕掛けを待つことなく踏み込んだ。
「後ろからの仕掛けがないと思ったので、行けると思ったタイミングで思い切って仕掛けられました。(最終)3コーナー手前ぐらいでは、もう(逃げる小林優に)並べるようにと思っていきました」
 抜群のスピードで思惑通り小林優に並びかけると、ピタリと続いて脚をためた小林莉子、グランプリ4連覇にこん身の力を振り絞る児玉碧衣らを退けてゴールを駆け抜けた。
「グランプリで優勝っていうことだけを考えて、ずっと1年間を走ってきた。それが達成できてうれしい気持ちと、あとはもうたくさんの人に支えてもらって応援してもらった感謝の気持ちでいっぱいです」
 5回目にしてつかんだ初のグランプリ。高木はゴールしたあとの2コーナーで右の拳を高く突き上げた。
 今年は獲得賞金ランク4位でのグランプリ出場も、下位との賞金差は大きくなかった。11月、小倉のグランプリトライアルの前には中ゼロ、中2日の強行スケジュールで連続の完全V。賞金を加算して、グランプリ出場につなげた。
「競輪祭(グランプリトライアル)の少し前くらいで(賞金)順位がすごい競ってたので、あのあたりが一番。1戦も落とせないというプレッシャーですごい苦しかったのはあります」
 グランプリチケットを手に入れたあとは、ここまで1カ月以上空いたゆとりのローテーションで大一番に臨んだ。
「高木隆弘(神奈川・64期)さんがずっと練習を見てくれて、気持ちの面でも技術の面でもすべてを教えてくださったので感謝しかないです。もう5年以上はお世話になっています。まず今年、私の一番の目標であり夢であったグランプリを優勝できて本当にうれしい。来年もまたビッグレースでたくさん優勝して、この舞台で優勝争いできるように頑張りたい」
 3度のG1優勝を誇る高木隆弘の指導を仰ぎ夢のグランプリ制覇にたどり着いた高木が22年は女王として歩みだす。

 終始、高木の後ろにポジションを取った小林莉子だったが、半車身差までしか詰め寄ることができなかった。初代ガールズグランプリチャンプの2度目の制覇は、来年に持ち越された。
「(高木)真備が強かったです。位置的にも展開的にも良かったのに…。自分はゴール前勝負しか勝ち目がないと思っていましたし、絶好の展開だった。でも、真備が強かったですね。(後ろから来る児玉の)気配は感じていたんですけど、それ以上に真備が掛かっていった。(最終)2センターではもらったって思ったのに、下りの加速がヤバかったです。マジかぁって感じでした。悔しいですね」

 4連覇のならずの児玉碧衣は、小林優の積極策が想定外だったようで後方からの巻き返しを強いられた。
「(小林)優香さんが駆けるのは予想外でした。初手は3番手くらいがいいかなって思ったんですけど、(尾方)真生が上がってきて、駆けるのは真生しかいないと思って入れました。真生が駆けていった上をまくればって思っていたんですけどね。もっと考えないとですね。絶対っていうことはないんだって勉強になりました。感触的には悪くなかった。4連覇はできなかったですけど、来年からまた3連覇、4連覇を目指していけるように。どの位置にいても自分の力で自分のタイミングで行ける力をつけていきたい。高木さんの優勝を称えつつ、自分もまたここに戻ってこられるように頑張ります」

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レース経過

 やや見合ったスタートから、石井寛子が出て行く。石井、高木真備、小林莉子、尾方真生、児玉碧衣、坂口楓華、小林優香となって周回。
 打鐘手前から小林優が上昇を始める。打鐘で誘導員は退避してそのまま前に出た石井を、2センターで小林優が叩く。追って尾方が巻き返しに行こうとするが、小林優は最終ホーム手前から一気にペースを上げて先行態勢に入る。石井はやや小林優との口が空き、尾方も中団の外に浮いてしまう。尾方の動きに乗っていた児玉も同じく苦しくなる。石井が小林優との車間を詰め切った2コーナーで高木が3番手から一気にまくる。小林莉と尾方後位から踏み出していた児玉が高木に続く。逃げる小林優を2センターで捕らえた高木が先頭に。直線に入り、小林、児玉も懸命に詰め寄ろうとするが、振り切った高木がガールズの頂点に立った。