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28#

決勝戦レポート

村上義弘(京都・73期)

村上義弘が2度目のGP制覇

 「ひとつのレースで燃え尽きられるように」
 今年の最後一走。村上義弘がグランプリへ全身全霊、すべてを傾けた。
 「今年は体調のコントロールができなかった」
 一年を通して、コンディションづくりに苦しめられたが、グランプリをその体が忘れることはなかった。7年連続10回目のグランプリが、肉体の眠れる力を呼び起こした。
 「岸和田以降、休養を挟んでトレーニングをしたら、自分の脚が太くなっているのが目に見えてわかった。それまでは体が反応しないのが悩みのひとつだったけど、グランプリ前は体が反応してくれた。自分の体が、細胞が(グランプリを)覚えていた」
 近畿地区の若手の成長、そして稲垣裕之の悲願の初戴冠。さまざまな思いのなかで迎えたグランプリ。勝負師、競輪選手としてのあるべき“村上義弘”の姿。その葛藤をすべてこの一走にぶつけた。
 「自分で自分を信じ切れてない部分があったりとか。近畿の仲間が、後輩が育っていくなかで、自分の役割がちょっとぼやけてしまったことが、レースの迷いを生んだのかなと思います」と、平坦ではなかった一年をを振り返った。
 レースは後続を一本棒にして、稲垣が立川特有の重いバンクで敢然と風を切る。5番手の平原康多が最終2コーナー手前からまくって出ると、村上に迷いなかった。自らを信じて力いっぱい前に踏み込んだ。
 「平原は日本一強い選手だと思うので、それが見えた瞬間にとっさに前を踏む選択をしました。稲垣がつくってくれた展開だったので、最後の判断だった」
 最終バックを通過すると村上と平原の体が重なり、サイドバイサイド。外から平原の大きな体が村上に重くのしかかったが、4コーナーでは村上の体がわずかに前に出た。が、今度は長い直線を武田豊樹が猛襲。両者がハンドルを投げたところがゴールだった。
 「ゴールした瞬間は武田さんのスピードが良かったので、(優勝かどうか)よくわからなかったです。オーロラビジョン見たら(自分の姿がカメラに)ぬかれてたので、ひょっとしたらと思いました」
 気迫と気迫のぶつかり合いは、4分の1輪差で村上に勝利の女神が微笑んだ。リオ五輪に出場した渡邉一成、中川誠一郎、そして輪界ナンバーワンの破壊力を誇る新田祐大らを押さえての優勝だった。
 「ほかの8人に比べて脚力的に優ってたかっていうと、そうではないと思いますし。速い人が勝つのではなくて、総合力で速く走れなくても勝てるんだっていうところを証明したかった。こういう結果が出せて、あらためて今後しっかり高い目標を持って頑張っていかなければと思います」
 2度目のグランプリを制して、賞金王にも輝いた村上。来年は栄光のグランプリチャンピオンジャージをまとって、重責と向き合う過酷な日々になる。
 「正直、またあの地獄の日々が続くのかと思うと(笑)。それだけ責任のあるユニフォームだと思います。いくつになってもこうやって競輪は、夢をかなえてくれますから。また新たに次の夢に向かって、しっかり頑張っていきたいです」
 地獄のなかでも夢を見続ける村上は、これからも競輪とともにあり続ける。
 
 平原のまくりに乗った武田豊樹が、直線で外を伸びて2着。わずかに村上に届かなかった。
 「難しかったですね。今日は平原君あっての自分ですから。平原君が頑張ってくれた。(平原が村上に)合わされたので、外を踏んだけど伸びなかった。もうちょっとだったんですけどね。でも、強い人が勝って納得している」
 
 グランプリ連覇に挑んだ浅井康太は昨年同様、単騎で俊敏に立ち回ったが、3着に入るのが精いっぱいだった。
 「悔しい気持ちが強いですね。優勝しか狙ってなかった。あの位置(4番手)は僕か平原さんのどちらかだと思ってました。行く自信はありましたけど、周りが自分以上に強かったです。来年、また一からやり直します」
 
 平原康多は番手まくりの村上を乗り越えられなかった。
 「しゃーない。(5番手を)取れたけど、結果、浅井のあの1車が効いた。思いっきり出し切って、行き切れなかったので力不足です。また1年間、頑張ります」
 
 稲垣裕之は強風のなか、果敢に風を切った。
 「早い展開になると思ったので、前を取りました。昨年のグランプリの反省を生かして、ラインのことを考えて、自分のレースをしました。僕の直感で自分が勝つ組み立てで先行しました。平原君も強かったけど、それを内から合わせた村上さんはさすがですね」
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レース経過

 号砲で平原康多、村上義弘、渡邉一成が一斉に飛び出してポジションを争う。結局、村上が正攻法の位置を取り切って、稲垣裕之―村上―岩津裕介、浅井康太、平原―武田豊樹、中川誠一郎、新田祐大―渡邉で折り合って周回を重ねる。
 青板2角で新田が動き出し、そのままバックで誘導を下して先頭に。そこを2センターで平原が斬り、さらに押さえた稲垣が赤板前から先制。すかさず浅井が4番手へ追い上げ、5番手に平原、7番手に新田、中川が最後方の隊形へと変わる。稲垣は後方の動きを窺った後、打鐘2センターからペースアップ。村上も車間を斬って反撃に備える。最終2角手前で平原がまくると、村上も番手まくりで応戦。両者で車体を併せて激しくモガき合った末、村上が直線半ばで平原を振り切って抜け出す。今度は平原後位から武田が猛然と詰め寄るが、村上がギリギリ堪えた。浅井も直線で外に持ち出して伸びるも3着まで。

車番 選手名 府県 期別 級班 着差 上り 決まり手 H/B
1 3 村上 義弘 京都 73期 SS 11.6 まくり
2 6 武田 豊樹 茨城 88期 SS 1/4W 11.5 追込み
3 8 浅井 康太 三重 90期 SS 1/2B 11.5 追込み
4 4 渡辺 一成 福島 88期 SS 1/2W 11.3
5 5 岩津 裕介 岡山 87期 SS 1/4W 11.6
6 1 平原 康多 埼玉 87期 SS 1/8W 11.7
7 2 中川 誠一郎 熊本 85期 SS 1B 11.3
8 7 稲垣 裕之 京都 86期 SS D 13.4 H B
9 新田 祐大 福島 90期 SS 0

渡邉雄太が強襲劇

 「一か八かの賭け」が見事奏功した。昨年は強引に主導権を取って早々と馬群に飲まれた渡邉雄太だったが、今年は「(渡邉)晴智さんに『先行しないんだったら獲りにいけ』と言われてたので。まくりたかったけど、我慢して2センターからと決めてたので」と、反射的に内に進路変更。そこからは吸い込まれるようにVロードを駆け抜けた。
 「めっちゃ伸びましたね。初手で新山(響平)さんの後ろを取りたかったけど取れなくて。中団取りにミスったけど、ちょうど吉田(拓矢)君の後ろになったのでついて行こうと。たまたまコースが空きましたね」
 今年は地元の静岡ダービーでG1デビューを果たすと、親王牌でG1初勝利をゲット。そして今回、今年で最後になる挑戦で、見事若手の頂点へ。順調にステップアップを遂げる若武者の、来年の活躍が今から楽しみだ。
 「F1でまだ1回しか優勝してないし、記念の決勝にもまだ乗ってないので、まずはそこから頑張りたいと思います。応援してくれた人たちのおかげで勝てたので、これからも応援お願いします」

 下馬評は低かった小笹隼人だが、巧みな位置取りからあわやの準V。
 「どんな展開になっても前にいようと思ってました。結果的に番手より、3番手を取ってよかったですね。畑段君が後ろにいたので内をすくわれないように。落ち着いて走れたし、感覚でいきました。最後も良い感じで伸びたと思います」

 対照的に、絶好のハコ回りだった鈴木竜士は悔しさを隠せない。
 「誰が先行するかだったけど、こういうときは取鳥(雄吾)君が頑張るから、それに賭けてました。もうちょっと引き付けてから行けばよかった。畑段さんが来てたし、吉田君もきてたし力んでしまいました。脚力不足ですね。2着ならまだしも、あれで3着では。獲ったら来年(ヤンググランプリを)休もうと思ってたけど、また来ます」

 吉田拓矢は力を出し切れず、悔いが残る結果に。
「(落車の)あおりのところで見てしまい、何もできなかった。弱気だったですね。もっと冷静になればよかったけど、焦ってしまいました」

 野口大誠は連覇ならず。落車のアクシデントも影響し、見せ場なく終わる。
 「1回振られたときに新山君はひるんだ感じに。立て直そうとしたときにちょうど畑段君に食らって落車してしまって。1回前を斬ってくれたら僕にもチャンスがあったのかと思う。でも人任せではね。最後も渡邉は良いコースを行ったね。僕があそこだったですね。内が重たくて。残念です。今日は今年の中でベストコンディションだった。また来年、良い年にしたいですね」

 取鳥雄吾は作戦を変更して積極策に出たが、直線で力尽きた。
「誰かが来て、退かして番手と思ってました。新山さんが勢い良く来ればハコを回れると思ってたけど、引いたので。(鈴木)竜士さんがついてたし、それだったら先行してもいいかなと。先行になることも考えてたけど、打鐘カマシで行きたかってですね。距離が長過ぎました」

 神田龍は「(初手で)9番手になってしまい、どのタイミングで行けばいいか迷ってしまって…」と後方のまま終わり、「結局、どこでもいけなかった。浅井(康太)さんに『余裕があったら内をいけ』と言われてたけど、渡邉君に行かれてしまいました」と肩を落とす。

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レース経過

周回は小笹隼人―畑段嵐士―取鳥雄吾―鈴木竜士―新山響平―野口大誠―吉田拓矢―渡邉雄太―神田龍の並び。
赤板前から取鳥が車間を切って後続の出方をうかがう。1センターから新山が動きを見せたが、合わせて取鳥が動いて打鐘から先行態勢に。周回中から取鳥の後ろにいた鈴木がこの動きに続き、3番手には前受けから小笹が入る。4番手外併走だった新山は畑段に当たられ打鐘過ぎ4コーナーで落車。レースは8名での争いとなってしまう。2コーナーから畑段がまくり上げるが、小笹の外で一杯に。鈴木がバック過ぎから番手まくりに出ると、畑段を飛ばして小笹が続く。畑段の外を踏んでいた吉田は浮いた畑段のあおりを受けて届かず。その後ろにいた渡邉は4コーナーから内に進路を選ぶ。ゴール目がけて懸命にモガく鈴木の外を小笹が迫り、スピードよく切り込んだ渡邉は最後も内から鈴木をとらえてヤンググランプリを制覇。鈴木を交わした小笹が2着に食い込んだ。

梶田舞が真の女王に輝く

 ガールズケイリンのトップ7選手による頂上決戦は梶田舞が抜群のレースセンスとキメ脚を発揮。一昨年の岸和田に続き、2度目のグランプリ制覇で頂点を極めた。
 「今年はグランプリで優勝できたら100点で、優勝以外は0点だったので、1年間100点で終われました。練習してきたことが出たなっていう感じで、直線の伸びはそれを練習してやってきたので、出せてよかったなって思います」
 レースは大方の予想どおり奥井迪が先行。冷静な立ち回りで絶好のポジションを取った後も周り動きはすべて見えていた。
 「(組み立ては)いつもどおり前受けからの展開を考えていたんですけど、思っていた展開と全然違いました。でもそのなかで動けたのが、グランプリでは初めてだったので、びっくりしています。上手く立ち回れたなって思います。ホームあたりから若干車間も空いてっちゃったんですけど、そこからは落ち着いていけました。バックからは誰がまくりにくるか見ていて、児玉(碧衣)さんがちょうど来たので、合わせて踏んで、あとは踏み負けなければ勝てるなと思いました」
 ここ一番の勝負強さが真骨頂。最後の大一番を見事に制し、2度目の賞金女王に輝いた。来年はグランプリ覇者として、ガールズケイリンを引っ張っていく。
 「今、練習の感じがすごくいいので、それを崩さないようにやっていけたら、さらによくなるなって思っています。私は基本をやる感じなので。あんまりみんなみたいに新しいことに手を出すことがあんまりないので。それももうちょっとしたら考えて。今はとりあえず基本をしっかりやって、自分のスタイルも変えずにいきたいなっていう感じです。ガールズ(ケイリン)がもっとプロスポーツとして、磨かれていけるように、先頭に立っていけるようにしっかり頑張りたいです」
 
 奥井迪は有言実行の先行勝負。地元ホームの大声援を後押しに、力の限り最後までペダルを踏み込んだ。
 「出し切りました。ここで逃げ切るつもりだったんですけど、それで結果はこれなんで、力不足ですね。今年の最後なんで、本当に出し切ろうと思っていました。後ろを気にせずに自分のペースで踏んだんですが、バックでもう脚がいっぱいで、きつかったです。最後に踏み直せる脚がないと。甘くはないですね。2着だったんで、来年は優勝したい。まずはグランプリに出ることですね。スタイルは変えずに頑張ります」

 流れに乗れずに後方7番手に置かれた児玉碧衣は懸命に外をまくり上げたが、3着に入るのが精いっぱい。レース後は悔し涙を流した。
 「梶田さんよりも先に出たかったけど、そこまで全然スピードに乗ってなくて。誘導のペースが早かったし、ゴチャついて自分で『どうしようどうしよう』と焦ってしまいました。いつどおり車間を切って、慌てずに行っていれば…。今年1年を振り返って一番、自分らしくないレースで、悔いが残るレースでした。本当にすごい悔しいです。応援してくれたファンに恩返しができなくて…。今の練習では足りないことが分かったので、またグランプリに向けて気合を入れて練習します」

 高木真備も初出場のグランプリで何もできずに終わってしまった。
 「力不足です。(奥井に)付いていけなかった。悔しいですけど、すごくいい経験になりました。この悔しい気持ちは久しぶりなので、もう1年頑張って、来年のグランプリは優勝したいです」

 石井寛子は内枠を生かせず、勝負どころで立ち遅れてしまった。
 「悔いのないように走ろうと。下がって、もう1回、行ければよかったんですけどね」

 奥井の後位で絶好の展開となった尾崎睦は伸びを欠いた。
 「展開はよかったんですけどね。バックで詰まって、後ろから来ると思って気にしていたら、奥井さんが踏み直してました。奥井さんが強かったです。力が足りないと感じたので、もっと力をつけます。来年は平塚でグランプリなので、しっかり出場できるように頑張ります」

 山原さくらは奥井の後位に飛び付けなかった。
 「あの練習しかしてなかった。尾崎さんが来たときに締め気味だったので悩んでしまった。粘りにくかったですね」
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レース経過

 梶田舞も勢いよく飛び出したが、最内の石井寛子がスタート争いを制して正攻法へ。周回は石井、梶田、児玉碧衣、山原さくら、尾崎睦、奥井迪、高木真備の並び。
 赤板ホーム手前から山原、さらに尾崎も車間を切って、奥井の出方をうかがう。打鐘前で誘導員が退避すると、まず山原が上昇を開始。奥井の動きをけん制するように尾崎もアクションを起こす。4コーナーで山原が先頭に立つと、奥井は山おろしをかけて主導権を握り、一気にレースのピッチが上がる。奥井の仕掛けに尾崎、梶田が続き、いい勢いで前との車間を詰めた高木だがハイペースで駆ける奥井の前に4番手外で動けない。代わってバックから児玉が巻き返し、山原は4番手から梶田の内にもぐり込む。奥井の踏み直しに番手の尾崎は徐々に遅れはじめ、奥井が後続を離して押し切るかに見えたが、2センターから踏み上げた梶田が鮮やかに前の2人を逆転。2年ぶり2度目のガールズグランプリを制した。